2020年に拡大した新型コロナウイルスの影響により、世界中で対面会議や商談などの企業活動が大幅に制限される中、オンライン上で行われる会議(オンライン会議)の需要が増大しています。
オンライン会議はインターネットを利用して遠隔で実施する会議の総称です。Web会議システムをはじめ、テレビ会議システムやオンライン商談システムなど、オンライン会議を実施するための多種多様なツールが存在しているため、定義や言葉も混在して使われがちです。この記事では、そんなオンライン会議の一つである「Web会議」について解説します。
もくじ
Web会議とは?
Web会議とは、参加者が各自のPCやスマートフォンなどのデバイスを利用し、インターネットを通じて音声と映像を共有しながらリアルタイムにコミュニケーションを取る仕組みを指します。複数人での同時接続が可能なため、数名~数十名での会議に多く利用されています。このWeb会議にはどのような特徴があるのでしょうか?
Web会議の特徴
近年市場が伸びているオンライン会議の中でも、Web会議はその中心的存在として多く利用されており、今後もますます需要が伸びるといわれている遠隔コミュニケーションサービスです。
利用するには、事前に専用アプリのダウンロードやアカウントの取得、カメラ機材やヘッドセットなどの準備が必要となりますが、テレビ会議のような専用機器や専用回線は必要ないため、利用しやすいサービスといえます。また、Web会議用アプリは無料で利用できるものも多く、コスト的にも優れているため、数多くのテレワーカーに活用されています。
Web会議が普及した理由
インターネットの拡大とともに発展してきたオンライン会議ですが、始まりは電話回線を利用した電話会議だといわれています。その後、通信技術の発展によりビデオ通話が可能になると、専用機器・回線を通じて会議室同士を結ぶテレビ会議が開発されました。テレビ会議は遠隔での同時多人数のコミュニケーションを可能にし、企業生産性の向上に大きな成果をもたらしました。
そして、PCやタブレット・スマートフォンといったデバイスの進化、さらなるICTの技術進歩により、Web会議が誕生しました。Web会議では専用機器を必要とせず、参加者個人のデバイス間でのコミュニケーションが可能となったため、場所を選ぶことなく、どこでも誰とでもオンラインでの会議が可能となり、テレワークを大いに推し進める原動力となりました。
Web会議のメリット
Web会議のメリットは、大きく4つ挙げられます。
1.移動時間の短縮が可能となり、より重要な業務へ注力できる
会議のための移動が不要なため、その時間をより重要な業務にあてることができます。
会議参加者の通勤時間や移動時間が例えば1日3時間だとすると、1人当たり月間で約60時間、年間では実に約720時間という膨大な時間となります。これは、就労時間を1日8時間として計算した場合の約90日間分に相当し、仮に就業者4人がこの時間を他に振り替えた場合、丸々1人分の年間就業時間が浮く計算となります。
こうした時間を生産性の高い業務に振り替えることが、企業にとっていかに重要な課題であるかがわかると思います。
2.交通費・資料印刷費などのコストが削減できる
Web会議は、交通費が不要になることに加え、資料などを画面で共有できるため印刷にかかる経費も削減できるなど、コストを押さえる効果があります。移動や資料印刷に1人あたり1日2,000円かかっていたと仮定した場合、年間で約48万円、10人で480万円のコストが圧縮できることになるのです。
通勤費を圧縮したという大企業の話が報道されていましたが、こうして計算してみると、その理由が良く理解できます。
3.居場所にとらわれずに、スピーディな意思決定ができる
Web会議は場所を選ばずに実施できるため、参加がしやすいという利点があります。
決裁者が出張中の場合でも、会議システムのある施設に向かえないなどの理由で意思決定が遅れるといったことを回避できます。また、関係者が容易に参加できるため、重要な意見を決裁者が同時に多く得られるということも意思決定を速める要因となります。
4.BCP(事業継続計画)対策になるため、企業全体の価値向上につながる
災害や疫病などで移動が困難な場合でも社内外でコミュニケーションがとれるため、生産性を下げることなく、企業価値を向上させることが可能となります。2020年の新型コロナ感染拡大の影響下では、とくにその重要性が見直され、Web会議は今後も需要が大きく高まるといわれています。
Web会議ツールを選ぶ際に気を付けるべき3つのポイント
Web会議ツールは、無料有料を合わせると数十ものサービスが存在します。それぞれ特徴や長所が異なるため、Web会議ツールを導入する際は慎重に吟味する必要があります。ここでは、Web会議ツールを選ぶ際にとくに気を付けるべき3つのポイントを紹介します。
1.通信品質
Web会議ツールに求められる最も重要なポイントが音声と映像の通信品質です。Web会議は、利用しているツールや接続拠点の数・回線環境などによって音声が途切れてしまったり、映像が遅延してしまったりすることがあります。とくに、大事な商談や会議で通信に不具合が発生し、正常なコミュニケーションが取れなくなってしまうと、業務の進行に大きな支障をきたす可能性が出てきます。
2.セキュリティ
Web会議ツールの大きな懸念として、セキュリティのリスクが度々挙げられています。Web会議を利用する際に考慮すべき主なポイントは次の通りです。
●会議データの所在
音声・映像・共有資料・チャットの内容といった会議データの保存先は、情報漏洩のリスクに関わってきます。インフラは何を利用しているのか、どこの国のデータセンターにあるのかなど、注意が必要です。
●通信の暗号化
通信が暗号化されていない場合、重要な会議データを盗聴・改竄されるリスクがあります。暗号化がされているか、暗号化の方式は安全なものか確認しましょう。
●会議参加者の認証方式
Web会議の仕様を悪用し、ランダムな会議URLに対しアクセスを試みる悪質行為の被害が報告されています。会議に無関係な人の乱入によって、会議進行の妨害されるだけでなく機密情報の漏洩の危険性も出てきます。会議参加者の認証方式について確認するべきでしょう。
●脆弱性対応
Webサイトやニュースなどをウォッチし、利用を検討しているWeb会議サービスの脆弱性の発生・対策状況を把握しておきましょう。サービス提供者のセキュリティに対する取り組み姿勢も重要な選定ポイントです。
3.操作性
Web会議ツールには、バーチャル背景やカレンダー共有・音声の自動テキスト書き起こし・アプリとの連携などができる多機能なものから、ビデオ通話と画面共有をメインとしたシンプルなものまでさまざまあります。
機能は多いに越したことはありませんが、多機能になればなるほど操作性が複雑になりやすい傾向にあり、複雑さを理由にweb会議ツールの活用が社内で定着しないということも珍しくありません。
活用する目的に合わせて、誰もが使いやすいweb会議ツールを選ぶようにしましょう。
Web会議のおすすめツール5選
ここでは、おすすめの5つのツールをご紹介します(2020年9月現在の情報です)。それぞれの特徴を比較し、自社にあったツールを導入するようにしましょう。
Zoom
現在最も利用者の多いツールといわれています。原則としてアプリのインストールが必要で、無料版ではグループミーティングは40分までという制限時間がありますが、多くのデバイスで利用が可能です。画面共有やチャットなど必要な機能はひととおり搭載されている他、「バーチャル背景」が簡単に設定できるため場所を選ばず利用できる点でも人気の高いツールです。
Skype Meet Now
古くから、無料通話やチャット機能をベースにコミュニケーションツールとして発達してきたSkypeが、2020年4月から提供開始したWeb会議サービスです。Skypeのアプリをインストールしていなくてもブラウザでの利用が可能なため、より気軽に参加できます。機能は画面共有・チャット・録画・背景のぼかしが利用できます。
Google Meet
Googleが提供しているツールです。Googleアカウントがあればだれでも無料で利用でき、最長60分間の会議を開催することが可能です。ブラウザから参加でき、画面共有やチャットが利用できます。G suiteを契約している場合は、Googleカレンダーとの連携や、会議の録画・ライブ配信など追加の機能も使用することができます。
Microsoft Teams
マイクロソフトが提供しているグループウェア・Office365に組み込まれているコラボレーションツールです。世界中でOffice365の契約者を中心に利用されています。チーム内でのチャットやグループ会議、Word・Excel・PowerPointといったOfficeアプリ、スケジュールの管理機能などが統合されたサービスで、セキュリティの高さも人気の理由となっています。無料版ではチャットと会議に関する機能のみ利用できます。
Cisco Webex Meetings
海外での認知度が高い、有料のツールです。そのセキュリティの高さ・安定性・豊富な機能から、世界中のビジネスパーソンに多く利用されています。マシンやネットワークへの負荷が低いことも人気の理由です。
まとめ
ツールを使い分けることが効率化への道
近年、生産性の向上を図るため、ワーキングスペースにとらわれないシームレスな就業環境の確立が必要とされています。こうした取り組みの中心にあるテレワークの導入は、今後さらなる拡大を見せることが予想されます。それに伴ってオンライン会議を活用するシーンもますます増加していくことになるでしょう。
しかし、ひと口にオンライン会議といっても、多種多様なサービスが提供されているため、用途や目的に合わせてツールを使い分けることが求められます。
今回はその中でも「Web会議」にフォーカスして解説しました。次回は、最近注目されている「オンライン商談」について解説いたします。