2023.06.02 営業Tips

OJTとは?メリット・デメリットと成功のためのポイントを詳しく解説

OJTとは、通常業務を通じて実践的なスキルや技術を習得する教育方法のことです。メリットが多い一方で、教育方法が属人化する傾向にある点、通常業務が遅延するといったデメリットがあります。今回はOJTのメリットやデメリット、運用のポイントなどを解説します。

OJTとは

OJTは「On-The-Job Training」の略で、日本語では「職場内訓練」と訳されます。職場の上司や先輩が実際の仕事を通じて指導し、知識や技術などを身に付けさせる教育方法を指します。通常業務と並行して、実践的なスキルを習得できる点が特徴です。

OJTと同様に人材育成の場面でよく使われるのは、OFF-JTという言葉です。OFF-JTは「Off the Job Training」の略で「職場外研修」と訳され、研修のための時間を別途設定して行う教育方法のことです。多くの企業が、OJTとOFF-JTを併用して人材育成を進めています。

OJTのメリット

OJTの主なメリットとして挙げられるのは、次の6つです。順番に解説していきます。

● 即戦力・実践力のある社員の育成が可能
● 生産性の低下抑制
● 個人に合わせた指導が可能
● コミュニケーションの活性化
● 指導する側のスキルアップ
● 教育コストの抑制

即戦力・実践⼒のある社員の育成が可能

OJTを行い実際の業務を通じた人材育成に取り組むことで、実践力を備えた社員の育成につながります。実践力のある社員は、早期に即戦力となることが期待できるでしょう。

実務に即した研修をリアルタイムで行うため、業務の内容や進め方を理解しやすい点が特徴です。また、現場で起こるイレギュラーな事象に新人自身が試行錯誤しながら対応することによって、自然と業務に関するノウハウや知見を蓄積することができ、対応力が磨かれます。OJTによって、職務未経験者であっても効率よく実践力を身に付けられるのです。

⽣産性の低下抑制

OJTはOFF-JTに比べ、生産性の低下を抑制できます。OFF-JTは研修のための時間及び機会を別途設ける必要があります。業務を中断して研修に参加するため、その間受講者が行っていた仕事はストップするでしょう。その点、OJTは業務の流れの中で知識やスキルを身につけることが可能です。

さらに前述の通り早期の戦力化が期待できる点を考慮しても、生産性の低下を抑制する観点から有効な方法といえます。

個⼈に合わせた指導が可能

OJTは、トレーニー(教わる側)のそれぞれの個性や強み、理解度などに応じた指導が可能です。上司や先輩がトレーナーとなって1対1で指導を行うことが多いため、画一的な研修に比べ教わる側の個性や強みを把握しやすいためです。

どこまで理解しているか、何でつまずいているのかを把握してもらいやすいため、十分に理解しないまま教育が進むことを避けられます。

コミュニケーションの活性化

OJTによって、コミュニケーション活性化の効果も期待できるでしょう。OJTはトレーナーと教わる側であるトレーニーの双方が、マンツーマンで綿密なコミュニケーションを取りながら通常業務に当たります。その結果、自然に会話が増え、お互いの理解が深まります。

さらにトレーナー同士、あるいはトレーニー同士の情報交換も加わることで、部内、さらには会社全体のコミュニケーションが活性化にもつながるでしょう。

指導する側のスキルアップ

指導する立場のスキルアップが見込めるのも、OJTのメリットの1つです。上司や部下はトレーナーとして部下や後輩を直接指導します。その際、トレーナーの理解が浅いと、しっかりと教育できません。そのためOJTは業務理解を深める、よい機会になるでしょう。

また人によって習得度や理解度が異なるため、それぞれに合ったわかりやすい教え方や育成方法を考える必要があります。さらに個々の強みや弱みを勘案し、担当業務を選択しなければなりません。このように指導する側も業務理解が深まり、指導スキルが磨かれると考えられます。

教育コストの抑制

OJTは、教育コストの抑制にもつながります。OFF-JTは研修プログラムを外注する、あるいは講師を招くための費用が発生しますが、OJTは社内で行うためそれらのコストはかかりません。

業務時間内の対応であれば、残業代や休日出勤に対する手当も不要です。コスト面からみても、効率のよい人材育成法といえるでしょう。

OJTのデメリット

多くのメリットがあるOJTですが、次のようなデメリットもあります。

● トレーナーによってトレーニーの経験値やスキルにばらつきが出る
● 通常業務が遅延・停滞する
● トレーニーが放置される可能性がある

それぞれ確認していきましょう。

トレーナーによってトレーニーの経験値やスキルにばらつきが出る

OJTのデメリットのひとつとして、トレーナーによってトレーニーの経験値やスキルにばらつきが出ることが挙げられます。トレーナーは主に営業担当者が行います。通常、教育に特化したスキルがあるわけではないため、指導力に個人差が生じる可能性が高いです。

すべてのトレーナーが性格的に指導向きというわけではないことも、考慮する必要があります。トレーナーは、ノウハウを伝える以外にも、改善のアドバイスを行うことやトレーニーを評価することも求められるのが一般的です。しかし、アドバイスの伝え方が抽象的でわかりにくかったり、評価基準を十分に理解していなかったりするケースも想定されます。

また、営業担当者の営業手法が属人化していることも少なくありません。属人化とは、特定の担当者が行う業務の進め方や詳細を、他に知っている者がいない状態のことです。業務が属人化している場合は、教える内容が営業担当者の経験値に大きく左右されてしまうリスクがあります。

通常業務が遅延・停滞する

通常業務が遅延・停滞する可能性があることもOJTのデメリットです。OJTの期間中、トレーナーは通常業務と並行して、部下や後輩の指導を求められます。トレーナーがキャパオーバーになる可能性が高く、通常の業務に支障をきたす可能性があるでしょう。

このような状況を防ぐため、人事担当マネージャーはOJTの実施状況を定期的にヒアリングし、現場の負担軽減を図れるようにサポートすることが不可欠です。

トレーニーが放置される可能性がある

トレーナーの通常業務の遅延や停滞を解消しようとすると、今度はOJTが機能しなくなる可能性がある点に注意しましょう。OJTが機能不全に陥ると、最悪のケースではトレーニーが放置される危険性があります。

OJTを行う際の4つのステップ

ここからは、OJTを行う際に欠かせない4つのステップをご紹介しましょう。具体的には以下のような流れで行います。

ステップ1.やってみせる
ステップ2. 説明する
ステップ3. やらせてみる
ステップ4. 評価・追加指導する

上記のステップの1つでも疎かになってしまうと、円滑に人材育成を進めるのは難しくなるかもしれません。順番にみていきましょう。

ステップ1.やってみせる

全体像をイメージしやすくなるように、まずトレーナーがその業務をやってみせます。トレーナーが「どのような内容を」「どのような順番で」行っているのかを見せることで、具体的な業務の流れをイメージしやすくなるでしょう。

すべてのトレーニーに対して見本を見せる時間が取れない場合や、一度では覚えきれない場合は、トレーニング内容を撮影しておき、トレーニーに視聴してもらう方法をお勧めします。後からいつでも見返すことが可能なので効率的です。

ステップ2.説明する

業務の流れを見たうえで、説明や解説を聞くと理解が深まります。このとき状況説明にとどまらず、その背景や目的まで伝えることが重要です。一方的に説明をするのではなく、適宜質問の時間を設けると、トレーニーの理解度を確認しながら進められます。

ステップ3.やらせてみる

見本を見せて説明を行ったら、次はトレーニーが実際に業務に挑戦するステップです。業務の重要性や失敗した場合のリスクを考慮する必要はあるものの、なるべく1人でやらせてみるとよいでしょう。仮に失敗した場合でも、責めないことが重要です。

ステップ4.評価・追加指導する

最後に評価・追加指導を行います。良かった点と改善点を、具体的にフィードバックしましょう。改善の必要がある箇所を指摘するだけでなく、良かった点にも積極的に言及することで、トレーニーは次回以降も前向きに取り組めるはずです。

また失敗した場合も成功した場合も、理由を分析しましょう。同じ失敗を防ぎ、成功の再現性を高められます。

OJTの的確・効率的な運⽤のために重要なポイント

OJTを的確、かつ効率的に運用するために重要なポイントは、次の3点です。

● OFF-JTなどと併用して取り組む
● トレーナーの教育を行う
● OJTで行う業務を整理する

1つずつ解説していきます。

OFF-JTなどと併用して取り組む

OJTにOFF-JTをはじめとした各種教育方法を併用することで、より育成効果を高められます。OJTは通常業務の中で実践的なスキルを身に付けられる教育方法ですが、トレーナーによって教育の質にばらつきが出る点や通常業務が停滞する点がデメリットです。

そのためOFF-JTを併用して、デメリットを補完する方法が有効です。例えば業務の考え方や取り組む姿勢、ビジネスマナーなどの基本的な知識とスキルをOFF-JTで学習し、その後OJTを実施する方法は多くの企業が取り入れています。

OFF-JTの他に、ロールプレイやグループワークなどを組み込んだプログラムを策定することも一般的です。ロールプレイは、営業役とお客さま役を演じて電話応対スキルなどを学ぶ方法です。グループワークはグループ単位で課題に取り組み、課題解決能力やチームワークの習得を目的に行います。

トレーナーの教育を行う

トレーナーの教育を重視し、しっかりと行うことも、OJTで成果を出すためには欠かせないポイントです。トレーナーのスキルによって教育の質に差が生じてしまうことは、すでにお伝えしてきた通りです。さらにトレーナーごとに評価の偏りが発生することも、防ぐ必要があります。

そのためOJTを個人に任せきりにせず、トレーナーとの定期的な面談や進捗管理を行うことが重要です。企業として、階層別研修にOJT関連の内容を組み込んだり、OJT関連のスキルの習得を配置転換や昇進の要件とする方法も考えられます。

OJTで行う業務を整理する

OJTで行う業務の整理は、効率的な運用には不可欠です。すべての職場や業務が、OJTに適しているわけではありません。仕事の進め方がある程度決まっており、マニュアルが整備されている業務には向いていますが、新規のプロジェクトやイレギュラーな事態が頻発する業務では避けた方がよいでしょう。

そのためトレーナーが、自身が担う業務のうちOJTに向いている業務とそうでない業務を仕分けをしておく必要があります。

OJTを成功させるために必要な3つのこと

OJTを成功させるためには、以下の3つの点が必要です。

1.目的・意図がある
2.計画に基づいている
3.継続する

それぞれの内容を確認していきましょう。

1.⽬的・意図がある

OJTの目的・意図を明らかにし「どのような人材に育てたいのか」という、育成後の具体的な人物像の設定を行いましょう。目標設定が曖昧なままでは、効果的なトレーニングを行うのは困難です。

目的や目標をトレーナーとトレーニーの双方で共有できれば、方向性がずれることなく、ゴールに向かって自律的に取り組めるでしょう。

2.計画に基づいている

設定した目標を踏まえて計画を策定し、それに基づいて実行することも大切です。トレーニーの経験値や保有する知識・スキル、性格などを把握し、トレーナーに任命する人物や身に付ける知識やスキルの範囲などを検討します。

トレーニーの状態に応じて、当初の目的や意図を変更する必要が生じる可能性もあるでしょう。ただし場当たり的に変更するのではなく、その都度OJTの内容や成果を検証しながら行いましょう。

3.継続する

OJTの効果が実務で発揮されるにはある程度の時間を要するため、反復的・段階的なトレーニングを継続して実施することが重要です。単発のトレーニングのみで効果を得るのは、困難なことが多いでしょう。

また突発的なトラブルで取り組みが中断し、放置されるケースも少なくありません。計画通りに継続しているか、定期的に第三者がチェックする必要があります。

OJTを実施する際の課題

OJTを実施するうえでは、主に次の2点が課題になることが多いでしょう。

● 属人化は避けられない
● 時間の確保

それぞれの内容を解説していきます。

属人化は避けられない

OJTを行ううえで、ある程度の属人化は避けられないといえるでしょう。

OJTが制度化されていなかったりノウハウが蓄積されていなかったりすると、トレーナーの裁量に任せた取り組みになることは避けられず、進め方や内容が属人化する傾向があります。OJTがある程度仕組み化されており、計画的に進めた場合であっても、トレーナーごとの考え方によって属人化が起きるリスクがあるでしょう。

そのためOJT以外の研修を組み込み、併用して行うことをおすすめします。教える内容が統一されている、受講者全員が参加できる研修が理想的です。ただしOJTや通常業務に追われ、さらに一般的な外部研修を行う時間を確保するのは、現実的ではない企業も少なくないでしょう。

時間の確保

OJTのための時間を確保すること自体、困難な場合もあります。前述の通り、OJTはトレーナーが業務をしている様子を見せるだけでは十分でなく、説明をしたり質問に答えたりする時間も必要です。そのためトレーナー、トレーニー双方の時間を確保しなければなりません。しかし実態として、それが難しい職場や企業もあるため、時間確保に向けての調整が必要とされます。

『shouin for セールス』を併用して効果的なOJTを実施しよう!

OJTは通常業務の中で実践的なスキルを身に付けられる一方で、教育方法が属人化する傾向があります。時間の確保が困難な企業もあるでしょう。こういった課題を解決するため、OJTと『shouin for セールス』の研修コンテンツを併用して、育成効果を高めることがおすすめです。

『shouin for セールス』は学ぶ内容が統一されているほか、受講者の都合のいいタイミングで研修を受けられます。組織内に点在するノウハウやナレッジなどを一元管理することで属人化を防ぎ、効率的な人材育成が実現できるのも魅力です。AIの分析結果とトレーナーの経験に基づく的確なフィードバックによって、成果が出るまでのリードタイムを短縮させる効果も期待できるでしょう。

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