2023.07.21 営業Tips

OODAループとは?PDCAサイクルとの違いや具体例を解説

変化が激しい時代において企業が求める成果を生み出すには、柔軟な対応が求められます。刻一刻と変化する状況で活用されているのが、OODAループです。この記事では、OODAループの概要や導入事例、PDCAサイクルとの違いについて詳しく解説します。

OODAループとは?PDCAサイクルとの違い

OODAループは、激しく変化する状況下でも企業が求める成果を得るために編み出された、意思決定に関するフレームワーク(思考の枠組み)です。元々は戦闘機による戦闘の勝率を高めるため、アメリカ空軍が生み出した手法でしたが、高い効果と凡用性から現代ではビジネスシーンで活用されています。

OODAの読み方は「ウーダ」で、フレームワークの基本となるObserve(観察)・Orient(状況判断)・Decide(意思決定)・Act(実行)の頭文字をとった略語です。OODAループを回して意思決定を積み重ねることにより、企業の目標達成を目指します。

一方、PDCAサイクルは、業務改善に関するフレームワークです。Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の4つで構成されています。PDCAサイクルを繰り返すことにより、管理業務が継続的に改善される効果が期待できるのが特徴です。

よく比較されるOODAループとPDCAサイクルですが、実施する目的が異なります。OODAループの目的は意思決定であり、迅速な対応や判断が求められる場面で有効です。即応性に優れており、変化の激しい状況下でも機会損失を防ぐ効果を期待できます。

一方、PDCAサイクルの目的は品質改善です。結果やプロセスに重点を置き、長期的な視点で企業成長につなげたい場面で活用されます。次々と変わる社会で成果を得るには、長期的に取り組むPDCAサイクルと、即応性に優れるOODAループの活用が求められています。

OODAの重要性

OODAループは、1970年代にアメリカの戦闘機操縦士かつ航空戦術家として活躍したジョン・ボイド氏によって考案された手法であり、迅速な意思決定と行動により高い成果を上げていたものです。

このOODAループは、経営判断のスピード化やSNS普及やAIの活用など、変化の激しい現時代において重要なフレームワークであり、臨機応変な対応が求められる営業活動で活用されています。

OODAループとPDCAサイクルの3つの違い

OODAループは、PDCAサイクルとは異なる性質を持ちます。先の読めない状況で成果を生み出すには、OODAループの持つ性質を理解して使い分けることが大切です。OODAループとPDCAサイクルの違いには、次のようなものがあります。それぞれの違いを詳しく確認していきましょう。

・自由度の高さ

・難易度の高さ

・対象範囲

自由度の高さ

PDCAサイクルは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の順に回して業務改善を図ります。一方、OODAループは必ずしも順番に回す必要はなく、途中で前の段階に戻ったり状況に応じて再開させたりすることが可能です。OODAループは運用の自由度が高く、現場の変化に応じて対応しやすいといった側面があります。

難易度の高さ

OODAループは、状況に応じて柔軟に対応できる自由度の高いフレームワークです。しかし、置かれている環境が複雑であればあるほど、情報処理や注目すべき問題の見極めにおいて難易度が高くなる側面があります。変化の激しい時代においてOODAループの活用は有効ですが、PDCAサイクルと異なり、内省的な要素だけで完結しない場合があるため注意が必要です。

対象範囲

PDCAサイクルは、社内のビジネスモデルに適した業務改善を目指すフレームワークです。一方、OODAループは内省的な要素だけでなく、外的な要素が始点となる場合があります。PDCAサイクルが社内に向けたフレームワークであることに対し、OODAループは社内だけでなく外的要因による変化を考慮して対応できる特徴があります。

OODAループが求められる2つの背景

近年、活用が注目されているOODAループですが、実際に求められる背景について詳しく確認していきましょう。

VUCA時代におけるビジネス環境の変化

OODAループが求められる背景には、VUCA時代に突入したことが挙げられます。VUCA時代とは、変化が激しく未来を予測するのが難しい時代のことです。VUCAの読み方は「ブーカ」で、以下の4つの単語の頭文字で構成されています。

・Volatility(変動性)

・Uncertainty(不確実性)

・Complexity(複雑性)

・Ambiguity(曖昧性)

元々はアメリカで使われていた軍事用語でしたが、現在は新型コロナウイルスの流行や自然災害、異常気象など、変化の激しい世界情勢を表す言葉として使用されています。また、AIやビッグデータなどのテクノロジーの発達により、市場ではスピード感のある対応が必要です。

このような状況において企業が生き残るには、市場動向を踏まえて素早く判断し、意思決定を下すことが求められています。業務改善を図れるPDCAサイクルに加えて、その場の変化に応じて柔軟に対応できるOODAループが注目されているのです。

PDCAサイクルとの使い分けが必要

PDCAサイクルは、品質管理や生産管理など業務改善を目的としたフレームワークです。業務改善を目指すうえで有効な手法ではあるものの、状況に変化がないことを前提としています。着々と変化するVUCA時代において、状況に変化がないことを前提としたPDCAサイクルだけで対応するのは難しいと考える企業も少なくないでしょう。

しかし、OODAループもあらゆる場面で有効に機能するわけではありません。状況によっては、例えば、変化の少ない業界での年間単位で販売促進を強化したい場合、計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)を順に行うPDCAサイクルを活用したほうが成果が出ることもあります。「VUCA時代だからOODAループが有効」だと決めつけず、状況に応じてPDCAサイクルと使い分けることが理想的です。

OODAループの4ステップ

OODAループを活用するには、以下の4つのプロセスを実行する必要があります。

  1. Observe(観察)
  2. Orient(方向付け)
  3. Decide(意思決定)
  4. Act(実行)

実行する手順を詳しく確認していきましょう。

1.  Observe │ 観察し情報を得る

Observeは「観察」と意味がありますが、OODAループにおいて観察は単に「見る」という行動を指しているのではありません。自分や相手が置かれている状況や環境、市場動向などを観察し、情報収集をおこなうことが求められます。激しく変化するVUCA時代において、つい先日まで需要が高かったものが、急に別のものに関心が変わることも少なくありません。

この変化に気づけないと、顧客が求める製品やサービスを提供するのは難しいでしょう。社会は常に変化しているため、その動向にいち早く気づくには観察するプロセスが重要です。また、過去の経験をもとにした常識に囚われないことも観察するときに欠かせません。次のOrient(方向付け)につなげるには、状況をありのまま受け入れることが重要です。

2. Orient │ 状況を判断し方向付ける

自分や相手が置かれている状況や市場動向などを観察したら、その情報をもとに仮説を構築します。仮説とは、成果を得るためにどのような順序で行動するべきか、成功につながる手段はどれなのか考えることです。ここで考え出された仮説は、最終的な行動に直結します。

どのような判断をするかによって最終的な行動が大きく変わるため、行動の方向性を決めるOrientは、OODAループの中でもっとも重要なステップだといわれています。行動の方向性を決める際に重要なのは、前回の判断と他社の判断の誤りに気づくことです。

OODAループは、1回実行しただけで成果を得られるものではありません。何度も繰り返しOODAループをおこない、目指すべき成果へとつなげていきます。たとえ1回目の判断で成果を得られなくても、前回の判断と他社の判断の誤りに気づければ、目指すべき成果へとつなげることが可能です。

3. Decide │ 意思決定する

意識決定をおこなうDecideでは、最終段階であるAct(実行)に向けて、具体的に何をすべきか決めます。前段のOrient(方向付け)では行動の方向性しか定まっていないため、複数の選択肢がある場合もあるでしょう。効果的に意思決定するには、実行する内容とObserve(観察)で得た情報が現状を本質的に捉えているのか見極めることが大切です。

4. Act │ 実行、行動する

最後は、Decide(意思決定)で決めたことを行動に移します。1回目の実行を終えたら、OODAループのObserve(観察)に戻りましょう。Observe(観察)に戻るのは、Act(実行)で実行したことにより現状が変わる場合があるためです。

たとえ変化が見られなくても、その情報が新たな仮説を構築する材料になる可能性もあります。1回目で期待した成果が見られなくても、その結果に一喜一憂する必要はありません。改善と実行を何度も繰り返しおこない、OODAループを回すことが成果へとつながります。

OODAループを事業に導入するメリットとデメリット

変化の激しい時代に有効なOODAループですが、あらゆる場面での導入が適しているわけではありません。メリットとデメリットをふまえたうえで、OODAループの導入を検討することが大切です。ここでは、OODAループのメリットとデメリットを確認していきましょう。

OODAループを事業に導入するメリット

迅速に意思決定ができるOODAループでは、次のようなメリットを得られます。

・ 問題に臨機応変に対応できる
・ 効率よく結果を出せる
・ 個々が主体的に行動できる

OODAループを導入するメリットとして、予期せぬ問題が発生したときに臨機応変に対応できることが挙げられます。OODAループでは、現場の担当者が問題解決に向けた意思決定をおこなうことが可能です。誰かに意思決定について確認する必要がないため、現場の担当者の判断で迅速に対応できます。現場の担当者の判断力を鍛えられれば、問題を回避することにも役立つでしょう。

変化が激しい時代において、効率よく結果を出せるのもOODAループを導入するメリットです。OODAループは他者の承認を得ることなく、現場の状況を見て意思決定をおこなえます。意思決定から実行までのプロセスを短くできるため、効率よく結果を出すことが可能です。

また、OODAループはチームや個人など小規模な人数で取り組むことを前提としたフレームワークです。はじめは慣れなくてもOODAループを回し続けることで、従業者一人ひとりが主体性を持って行動できるようになります。結果的に生産性の向上にもつながるでしょう。

OODAループを事業に導入するデメリット

多くのメリットがあるOODAループですが、考慮すべきデメリットがあるのも事実です。主なデメリットには、次のようなものが挙げられます。

・ 業務の統制が取れなくなる可能性がある
・ 業務改善・中長期的な計画策定に向いていない

OODAループは現場の担当者が意思決定できるため、「納期を前倒しした」「追加受注が発生する」など、予期せぬ問題が発生しても柔軟かつ迅速に対応できます。しかし、社内で行動の方向性をすり合わせておかないと、各業務の統制が取れなくなる可能性があります。あらゆる事態に備えるために、事前に意思決定における全体の方向性を決めておくことが重要です。

また、OODAループは業務改善・中長期的な計画策定に向いていないことも挙げられます。OODAループは対応したい問題が発生している状況下で役立つ手法であるため、大きな問題の生じていない業務改善には向きません。また、OODAループが効果測定のフェーズを持たない特性上、効果を見つつ対応する中長期的な計画策定にも不向きです。業務改善や中長期的な計画策定で成果を出したい場合は、長期的な視点で取り組めるPDCAサイクルの導入を検討しましょう。

OODAループを事業に導入する際のポイント

OODAループは、個人の裁量が大きいフレームワークです。社内で行動の方向性をすり合わせておかないと、業務の統制が取れなくなる可能性があります。OODAループで成果を出したい場合は、チーム全体で理念や目標を共有することが大切です。社内で理念や目標を共有し、個々の意思決定が組織の方向性とかけ離れないように注意しなければいけません。

また、状況に応じて社内で議論を重ねながら進めていくことも重要です。意思決定は個人の裁量に委ねられますが、社内で議論を重ねることで新たな気づきを得られる場合もあります。特に、Orient(方向付け)は、どのような判断をするかによって最終的な行動が変わることも多いです。単にOODAループを導入するだけでなく、チーム内で議論する機会を作りましょう。

OODAループの具体例

OODAループの導入を検討するにあたって、どのように進めるべきか悩む担当者もいるでしょう。ここでは、営業活動におけるOODAループの導入事例を紹介します。

営業活動におけるOODAループの具体例

営業活動におけるOODAループの具体例を確認していきましょう。

Observe(観察)…メールからの新規商談を獲得するために、事実と解釈を分けて客観的に現状を整理する。

Orient(方向付け)…現状を把握できたら、仮説を構築する。例えば、メールの開封率が前年から減少している場合、そもそもメールを見てもらえていない可能性がある。

Decide(意思決定)…構築した仮説をもとに実行する行動を決定する。例えば、開封率を上げるために件名は短く、本文は結論から記載するといった意思決定をおこなう。

Act(実行)…前段階で意思決定した通り実行する。実行したあとはObserve(観察)に戻り、検証する。

OODAとPDCAはシーンに応じた使い分けが重要

変化の激しいVUCA時代において、OODAループの活用は即応性に優れるため有効です。しかし、あらゆる場面でOODAループが有効に機能するとは限りません。状況によっては、業務改善に適しているPDCAサイクルのほうが成果につながりやすい場合もあります。OODAループとPDCAサイクルの異なる性質を理解したうえで、状況に応じて使い分けることが重要です。

OODAループ活用し業績アップにつなげよう

VUCA時代において、迅速に意思決定をおこなえるOODAループが注目されています。OODAループを導入すれば、問題に臨機応変に対応できたり効率よく結果を出せたりと多くの効果を得られます。しかし、OODAループを導入してもすぐに期待した成果が出るわけではありません。OODAループを何度も繰り返し、業績アップにつなげましょう。

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