2021.11.04 営業Tips

【初級編】インバウンド営業で成果を出すための7つのステップと重要な考え方

営業手法はさまざまありますが、ここ数年で「インバウンド営業」という言葉を見聞きする機会が増えたのではないでしょうか?

かつては飛び込み営業やテレアポなど、営業担当者側から商品・サービスを売り込む「アウトバウンド営業」が主流でしたが、現在では「インバウンド営業」を取り入れ、力を入れる企業が多くなってきています。

インバウンド営業に取り組む企業が増えている昨今、成果を出すために必要な7つのステップをこの記事で解説していきます。

インバウンド営業とは?

インバウンドとは、そもそも「外から内へ」「内向きの」などの意味を持つ言葉です。これを営業活動に置き換えると、外とは顧客のこと、内とは自社のことですから、「顧客から自社へ」という営業スタイルのことを指します。「受け身の営業」とも呼ばれ、企業側は情報を継続的に発信することで顧客の興味・関心を喚起し、購買行動を促すものです。

インバウンド営業では、主に以下のような手法が使われます。

・WebサイトのSEO対策
・メールマガジンの配信
・ホワイトペーパーの配布
・セミナーやイベントの開催、出展
・動画配信
・SNSでの情報発信

このように情報を発信していくことで、営業と接触するまでに、あらかじめニーズや興味を持つ顧客がふるいにかけられます。その後、アプローチしてきた顧客に対してさらに適切な情報提供や提案を行い、最終的に自社サービスや商品を買ってもらうというのがインバウンド営業のスタイルです。

インバウンド営業は「徹底した顧客ファースト」とも言われる手法です。自社サービスを訴求するアプローチはせず、まずは課題・悩みなど顧客のニーズを解決したり改善したりできるような情報を提供し、顧客との信頼関係を築きながらセールスにつなげていきます。

つまり、主語は自社やサービス・商品ではなく、「顧客」なのです。企業側はあくまでも顧客にとって価値のある情報を提供し、顧客の意思でサービスや商品を選び取ってもらうのが「インバウンド営業」です。

インバウンド営業が注目される理由や期待できる効果などについては、ぜひ入門編の記事をご覧ください。

インバウンド営業で成果を出すための7つのステップ

前述の考え方を踏まえつつ、インバウンド営業で成果を出すためにはどんなことに気をつければ良いのでしょうか。

まずは前段階として顧客に価値のある情報を提供し、自社や商品・サービスに興味・関心を持ってもらわなくてはなりません。
この前段階のことを「インバウンドマーケティング」と呼びます。インバウンドマーケティングでは、自社の商品・サービスが課題解決や改善につながるような潜在的な顧客をターゲットに設定し、ターゲットにとって有益な情報を発信し続けることで、興味・関心を喚起します。

インバウンド営業の性質上、潜在的な顧客を獲得するための「インバウンドマーケティング」が非常に重要です。そこで、インバウンド営業で成果を出すための方法を、インバウンドマーケティングを中心とした7つのステップに分けて解説します。

1.明確なペルソナ(ターゲット)像を設定する

どんなマーケティングにおいても、ターゲット像の設定は最も重要であり、まず初めに行うべきことです。ターゲット像はBtoBかBtoCか、すなわち法人か個人かによっても異なります。例えばBtoCなら年齢・性別だけでなく、属性や性格、行動など詳細に設定し、最終的に名前をつけて1人のキャラクター(=ペルソナ)として落とし込めるくらいまで作り込みましょう。

一方、BtoBセールスであれば対象は法人ですから、まずは企業規模や業種・職種、売上高、社風や将来の展望などターゲットとなる企業を想定します。その上で、実際にサービス・製品を使うであろう担当者個人のペルソナを作成します。所属している部署や、職位、業務上の課題や行動の傾向など、BtoCと同様に細かな設定まで落とし込んでいきます。BtoBの製品選定には担当者個人だけでなく、決裁者や他部署のメンバーが関わることもあるため、その場合は選定に関わってくるであろう複数の人間のペルソナも想定しておくと良いでしょう。

例)バックオフィス業務の効率化支援ツールを販売する企業の場合

■ターゲット企業像
・企業規模…中小企業(資本金5000万円、従業員200人)
・業種…小売業(スーパーマーケット)
・売上高…30億円
・抱えている課題…従業者のデジタルリテラシーの差、導入コストなどの面からデジタル化は進んでおらず、紙とペンを使ったアナログな環境がメイン。
・将来の展望…店舗DX化(デジタルサイネージ導入など)、書類のデータ化などについて、どのように取り組んでいくか検討中。
・選定に関与するメンバー…総務・経理・情報システム部門など

■製品選定担当者(キーパーソン)ペルソナ
・年齢・性別…40代男性
・性格…真面目で業務を淡々とこなし、繁忙期以外は定時帰宅。情報収集はWebサイト「月刊総務オンライン」「somu-lier(ソムリエ)」「オフィスのミカタ」など。SNSはFacebookをよく利用している。休日はインドア派で、読書やプラモデル製作が趣味。
・所属部署…総務
・役職…役職はないが、実質的に部門を仕切っている
・決裁権…なし
・所属部署の業務…機器備品管理・施設管理・文書管理・福利厚生業務
・社歴…新卒入社で勤続20年のベテラン社員
・業務上の悩み…「DX」という言葉はよく耳にし、経営層からもDXの推進を命じられているが漠然としており、何から手をつけて良いかわからない。総務に人が増えないので、今まで前例踏襲でやってきた業務も効率化しないとやるべきことに手をつけられないと考えている。
・業務における希望…まずは膨大にある紙の書類の保管・管理をなんとかしたい。文書を電子化して保存するのか、現在のアナログベースの業務自体もデジタル化できないのか検討したい。

ペルソナを詳細に設定すればするほど、抱える課題や求める情報に合わせたコンテンツを作成・提供しやすくなります。上記の他にも必要と思われる項目があれば臨機応変に追加し、有用なペルソナを設定しましょう。

ただし、ペルソナは実際に運用していく中で、最初に設定したものからズレていくこともあります。また、企業側が想定していなかった新規顧客が現れる可能性も十分ありえます。市場の動向を見ながら必要に応じてペルソナの情報を調整・追加し、戦略も柔軟に変えていくことが重要です。

2.ターゲットの課題や行動の仮説を立て、コンテンツを投下すべきチャネルを見定める

ペルソナを設定したら、そのペルソナに合わせたコンテンツを作成します。例えば、以下のようなポイントを重視すると良いでしょう。

・どのように情報を収集しているか
・どんな課題を持ち、どんな情報を求めているか
・どんな好み、嗜好を持っているか

まずはどこで・どのように情報を収集しているかを想定し、情報を投下する媒体(チャネル)を見定めましょう。SNSなのか、Webメディアなのか、ウェビナーなのか、SEO記事なのか、オフラインの展示会なのかなどを検討します。もし既に自社の強い集客チャネルがあるなら、それも考慮しましょう。

前述の製品選定担当者をペルソナとする場合、ペルソナが見ているWebメディアにタイアップ記事を掲載してもらう、Web検索で上位表示させるSEO対策に特化したページを作成するなどが有効だと考えられます。また、よく利用するSNSであるFacebookに広告を掲載し、ペルソナの目に触れやすくするのも良いでしょう。

以上のステップ2では、カスタマージャーニーマップを作ると方針が立てやすいです。カスタマージャーニーマップの作り方については、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

3.ペルソナの課題・求める情報に合わせたコンテンツを作成・提供する

必要に応じてカスタマージャーニーマップを作成し、コンテンツを届けるチャネルと必要とされる情報について整理できたら、それに応じたコンテンツを実際に作成します。

前述の製品選定担当者のペルソナに合わせたコンテンツを作成する場合、「総務部門のDXとは」「文書の電子保管のメリットとデメリット」などのコラムやハウツー系コンテンツを作ると良いでしょう。よくチェックしているWebメディアにタイアップ記事として掲載できれば特に有効そうです。

また、ペルソナの好みや嗜好に合わせたコンテンツのデザインも重要です。例えば、40代男性で真面目な性格なら、シンプルで落ち着いたデザインのページが好まれやすい傾向にあります。

4.サービス・商品について問い合わせやすい導線設計を行う

作成するコンテンツでは、ターゲットのニーズを満たすことはもちろん、加えてサービスや商品についてターゲット自身が能動的に問い合わせてくれるような導線設計を行わなくてはなりません。

顧客のニーズを満たせば、商品やサービスに興味・関心を持ってもらいやすくなります。そこから顧客がさらに詳しく情報を集め、サービスについての関心が高まったら、企業側はその意欲が低下しないうちに問い合わせや資料請求につなげなければなりません。そこで、問い合わせページや資料ダウンロードフォームへリンクするクリックボタンやWebページのレイアウトなどをよく見直し、コンテンツ内の導線を確保しましょう。

5.問い合わせにはすぐ対応する

ターゲットが商品・サービスへの問い合わせを能動的に行った瞬間が、最も興味の高まった瞬間です。そのため、資料請求などの問い合わせがあった場合、電話やメールの返事はできるだけ素早く対応しましょう。

一説には、資料請求依頼から10分や1日と、時間が経過するごとにアポイントを獲得できる確率が下がっていくというデータもあります。Harvard Business Reviewによると、「顧客からの問い合わせに1時間以内に対応できるかどうかによって、有効商談になる可能性に7倍もの差が生じる」(※)という調査結果が出ています。1分でも早くスピーディに対応することは、商品・サービスを成約に結びつけるために重要な要素であると言えます。

※引用元:マーケイット ブログ「インバウンドなお問い合わせ対応を実現する5つのポイント」3.1時間以内の対応を徹底するhttps://www.markeit.jp/blog/responsiveness/ (参照 2021-11-01)

6.データを収集し、刺さっているコンテンツ・施策を可視化する

インバウンド営業で成果を出すためには、実際の問い合わせやサイトの閲覧回数などのデータを収集し、ターゲットに「刺さっている」コンテンツや施策がどれなのか可視化し、継続的に改善を行っていくことが重要です。ここで言う「刺さっている」とは、「有益と思われている」「購買行動につながりやすい」ということです。

可視化した後は、よりターゲットのニーズや課題に合わせてコンテンツの質を高めたり、新しいコンテンツを増やしたりすることで、さらなる集客や問い合わせの増加につながりやすくなります。このとき、実際に顧客と接する営業担当者からのフィードバックを得て顧客の生の声を反映すると、より顧客のニーズに沿った良いコンテンツにすることができるでしょう。

7.よくある顧客ニーズに対し、最適な提案を体系化する

どのような営業でも、顧客のニーズを特定するためにヒアリングを行うと思います。ただし、一般的にインバウンド営業では、顧客が興味を持って問い合わせてきた時点である程度ふるいにかけられているため、アウトバウンド営業と比べて顧客ニーズが似通ったものになりやすい傾向があります。

そこで、よくある顧客ニーズに対して最適な提案をあらかじめ体系化しておくことで、迅速に課題の解決策を提案できます。
組織づくりという観点からも、提案内容を平準化することができ、個人依存の営業クオリティにならず経験が浅くても即戦力化が望めます。

まとめ

インバウンド営業は、攻める営業ではなく待ちの営業手法なので、効果が出るまで時間とお金がかかることも多々あります。しかし、仕組み化した上で軌道に乗れば営業効率が格段に良くなるだけでなく、成約率や顧客満足度の向上にも期待が持てます。

これからインバウンド営業に取り組む方や、進め方に行き詰っている方は、今回の記事と入門編の記事がきっと役に立つはずです。ぜひご覧ください。