inbound-sales
2021.05.26 営業Tips

【入門編】今求められるインバウンド営業とは? メリットや方法を解説

営業のミッションである自社の売上アップには、見込み顧客の母数を増やすことが必須です。そのためにも新規開拓を課題視している組織は多いでしょう。
しかし、一般的な新規開拓方法として知られるテレアポやDM送付、飛び込みなどのプッシュ型営業は、人手を要し、商談化率も低いため効率があまり良くないのが難点です。最近ではテレワークも増え、オフィスに担当者が不在のケースも増えており、従来の手法でアポイントや商談を獲得することの難易度はさらに上がっているという現状があります。

そこで注目されているのが、顧客からの能動的な「問い合わせ」を狙うインバウンドセールスです。この記事では、新規開拓に課題を感じている営業担当者やマネジメント担当者に向けて、インバウンドセールスとは何かとそのやり方について紹介します。

インバウンドセールス(インバウンド営業)とは

海外旅行客の訪日や購買行動のことを「インバウンド」と呼びますが、この言葉には元々「外側から内側へ」「内向きの」という意味があります。
これを営業に置き換え、外側=顧客、内側=自社ということで「顧客から自社に働きかける」形で成立する営業スタイルを「インバウンドセールス」と呼びます。

受け身型の営業スタイルのため「プル型営業」とも呼ばれるインバウンドセールスは、基本的にはWeb上のサービスやSNSなどICT(情報通信技術)を活用した新しい営業の形です。
具体的には、顧客にとって有益な情報を盛り込んだコンテンツを継続的に発信し、興味関心を喚起しながら信頼感を醸成し、最終的に自社製品のアピール・提案へとつなげます。

なぜ今必要とされているのか

インバウンドセールスが多くの企業で活用され始めた背景としては、顧客の情報収集力が成熟してきたことがあげられます。

インターネットが普及し、検索エンジンやレビューサイトをはじめとした情報取得手段は豊富になっています。そのため、買い手側は自ら情報収集する力を身につけました。
加えて、多くの企業がWebでの情報発信に多額の予算と人的リソースを投下していることから、年々コンテンツのクオリティも上がっています。

今や営業担当者からの情報提供を必要としていないケースも多く、自分達で情報収集した上で購買行動を起こすようになっています。そのため、顧客の能動性を味方につけた営業アプローチが効果的になってきたのです。

アウトバウンドセールスとの違い

インバウンドセールスを語る上で欠かせない、対となる存在である「アウトバウンドセールス」は、「内から外(アウト)へ=自社から顧客」へアプローチする営業スタイルです。
ベンチャー企業や零細企業など、まだ知名度がなく顧客数も少ない場合にはアウトバウンドセールスが適していることがあります。

アウトバウンドセールスとインサイドセールスそれぞれの具体的なアプローチ方法は以下の通りです。

アウトバウンドセールスの手法例

・テレアポ
・飛び込み(訪問)営業
・フォーム(問い合わせ)営業
・DM・セールスレター送付

インバウンドセールスの手法例

・WebサイトのSEO対策
・メールマガジン配信
・ホワイトペーパー配布
・セミナー/イベントの開催・出展
・動画配信
・SNSでの情報発信

上記のリストでも分かる通り、アウトバウンドセールスはテレアポや飛び込みなど典型的な営業担当者の業務内容で、アクション数と提案力がものを言います。
対するインバウンドセールスは、営業というよりはマーケティングの性質が強く、市場を把握した上での戦略や企画力・分析力が求められます。

なお上記はどちらの方が良いということではなく、自社の状況やターゲット層なども踏まえながら、インバウンドとアウトバウンドを掛け合わせることでより効果的な営業活動ができるでしょう。

インバウンドセールスに期待できる効果とは

それでは、インバウンドセールスにはどのような効果が期待できるのでしょうか。

リードからの信頼を得やすい

インバウンドセールスは顧客側からある程度興味を持たれている状態からスタートします。そのため信頼関係を構築しやすく、提案へ進めやすいことがメリットです。

コールドコール(接点のない企業に電話やメールなどでコンタクトを取ること)など、相手が自社を認知していない段階でのアプローチは、話を聞いてもらうまでのハードルが非常に高いです。
皆さんも経験があると思いますが、業務中にその時必要としていない営業電話がかかってきても煩わしく、基本的にできるだけ早く電話を切りたいと思いますよね。運よく話を聞いてもらえたとしても、自社を知ってもらうための紹介や懸念払拭に時間と手間がかかります。また、「押し売り」的な側面があるため、少しでも印象が悪くなってしまった時点で縁が切れやすいでしょう。

ですが、相手からの問い合わせがきっかけの場合には、何かしら期待値を持った上でコンタクトを取ってきているので、信頼獲得までの道のりが比較的整備されています。
ファーストコンタクトである程度の提案条件を把握できる場合もあり、効率的な営業活動が可能です。

営業活動を効率化できる

アウトバウンドセールスをする際は、時間と人手どちらのリソースも継続的に必要です。
テレアポや飛び込みなどはすべて担当者が行う必要がありますし、DM送付やフォーム営業においても結局のところ、中身のある内容でないと反応が得られません。
つまり、それぞれの企業に合わせて提案内容をある程度カスタマイズしないと効果が期待できず、機械的にコピーアンドペーストすればいいということでもないのです。

一方でインバウンドのアプローチは、立ち上げ時こそWebサイトの制作やコンテンツ戦略の策定、効果測定などコストや手間がかかります。
しかし、インバウンドの施策がうまく軌道に乗り、検索エンジンからの流入や問い合わせが増えれば、営業担当者はテレアポやDM・フォーム営業などアポ獲得のための活動をせずとも、見込み顧客が勝手に集まってくるようになるため効率的です。

顧客対応に集中することで受注率を向上

営業担当者が提案段階にあるリードに時間を割けるようになり商談の質を高められる点も、インバウンドセールスで成果が出た際のメリットです。

インバウンドで問い合わせが入ってくるようになれば、営業担当者は心理的な負荷・時間と手間のかかるテレアポなど新規開拓に時間を割くことなく、顧客との関係値構築に力を入れられるようになります。温度感の高いリードを優先的に対応し、営業が本来力を注ぐべき提案活動に集中することで成約率も高くなるでしょう。

インバウンドセールスのやり方

ここでは、インバウンドセールスを提唱するHubspotの考え方をもとに、インバウンドセールスの流れを解説します。

1:自社に適したリードを見極める

インバウンドで獲得したリードに対してアプローチする前に、まずはそのリードの質を精査することが重要です。

営業活動をしていると、つい獲得したリードやアポイントの「数」にフォーカスしがちですが、最も重要なのは、そのリードから受注する可能性がどのくらいあるのか、という点です。
つまり、自社サービスを必要としないリードを100人獲得するよりも、自社サービスを利用する可能性のある10人を獲得する方が営業の最終目標である成約に繋がりやすく、営業活動として正しいと言えます。

リードの属性や見込み度合いを予めチェックしておくことで、対応すべきリードの優先順位が分かりますし、営業担当がどのようなアプローチをすべきか把握することができるため、営業活動の一層の効率化が図れます。

例えば、顧客情報を入力してもらう画面で、顧客の抱えている課題や製品の導入の検討フェーズなど、知りたい情報を質問項目に入れておけばリード属性を分類できます。
メルマガ登録後であればMAツールで開封やクリックなどの反応を見たり、見込み度合いのスコアリングの機能を活用してみるなど、リードの属性や状況を把握する工夫をしてみましょう。

2:リードとの関係構築

リードの属性・検討段階を把握できたら、そのリードが抱える課題を解決するための情報を提供することで、関係を構築していきます。

関係構築にあたっては、事前にターゲット(ペルソナ)の思考・行動・感情の動きを想定し、時系列に沿って整理した「カスタマージャーニーマップ」を作成しておくと良いでしょう。カスタマージャーニーを理解することで、顧客が今どの段階におり、どのような情報を必要としているかが理解しやすくなり、顧客に寄り添った提案がしやすくなります。

例えば、ブログやメルマガ、ホワイトペーパーなどのコンテンツも、「認知・興味」「情報収集」「比較検討」「購入」といった、購入に至るまでの検討段階別に用意しておくことで、リードの状況に応じた情報提供をスムーズに行えます。
関心が高まっていない段階で強引に自社のプロダクトを売り込むのではなく、顧客が一つずつステップを登るための手助けをするようなイメージです。

3:相手の課題を理解する

十分に検討が進んでいるリードに対しては、具体的な提案につなげるために会話を掘り下げ、課題の明確化・目標・スケジュールや予算の確認を進めていきます。

ヒアリングにあたっては、具体的には「BANT」の情報を確認することを意識すると良いでしょう。以下の記事でBANTの詳細や、顧客から聞き出すためのコツを解説しているので参考にしてみてください。

その顧客が抱える課題や目標をヒアリングできたら、自社のサービスがその課題を解決できるというオファーにつなげます。提案に必要な情報を得られ、予算やスケジュール的にも今がそのタイミングだと判断できた場合は、提案のフェーズに移ります。

4:課題解決に向けた提案

ここまで来て初めて、具体的な自社製品の提案を行います。今まで得た情報を整理して、自社製品を活用した目標の達成方法や、具体的な契約の費用・導入のスケジュールについて提案しましょう。
なぜ自社が顧客の課題を解決できるのかをきちんと説明し、相手の最終判断を促します。この時重要なのは、これまでヒアリングしてきた内容をもとに、必ずその相手に合わせて最適化した提案を行うことです。

上記4つの段階を経てリードに向き合い、提案を行うことで営業の成果が上がりやすくなります。

まとめ

インバウンドセールスは、テレアポや飛び込み営業がしづらくなったニューノーマル時代に適した営業手法です。
セールスとマーケティングが融合した手法のため、初めは戸惑いもあるかもしれませんが、長期的に見るとアウトバウンドだけを繰り返すよりも効率的な施策といえます。アウトバウンド軸だけではなかなか成約に至らない、または契約が続かないという組織はチャレンジしてみると良いでしょう。

とはいえ、まずは何から取り組めばいいのか分からない担当者もいるかもしれません。そのような方は、インバウンド・アウトバウンドの手法も含めて新規開拓営業の具体的な方法を以下の記事で解説していますので参考にしてみてください。

■参考:https://blog.hubspot.jp/inbound-sales-methodology