BANT
2021.05.26 営業Tips

法人営業に重要なBANT情報とは? 営業時に使えるヒアリングのテクニック

「担当者は前向きだったのに、いざ正式に提案したら決裁責任者から『必要ない』と一蹴されてしまった…。」「今月のヨミに入れていたのに、最終承認までの期間が想定よりかかってしまい目標未達に…。」
営業活動をしていて、上記のような経験をしたことはないでしょうか。

これらに当てはまる方は「BANT」の確認が漏れているのかもしれません。
BANTを意識したヒアリングをすることで、顧客の課題感や検討度合い、提案する上でのポイントを見極めやすくなり、受注確度が上がる可能性があります。
この記事では営業担当者の方に向けて、BANT情報の定義と、営業に活かすためのポイントや具体的なヒアリングのテクニックなどを解説します。

BANTとは

BANT情報は以下の4つの要素で構成されています。

・Budget–予算
・Authority–決裁権
・Needs–必要性
・Timeframe–導入時期

それぞれ詳しく見ていきましょう。

Budget–予算

BANTの初めに来る文字は英語で “Budget(予算)”、つまり顧客の予算を指しています。
営業担当者のミッションは売上を立てることが基本となりますので、アタック先が動かせる金額を把握できて初めて適切な提案ができます。

顧客の経済状況も絡んでくるのでなかなか切り出しづらいところではありますが、ヒアリング時には最低限押さえておきたい情報です。

Authority–決裁権

次に “Authority” です。これは日本語で「権限」という意味で、この契約において決裁権を握るのは誰か、またその決裁フローはどのようになっているのかを確認します。

この項目を押さえておくことで、顧客の決裁者に合わせた提案内容へと工夫できますし、決裁フローをもとにスケジュールを見積もれるので営業計画も立てやすくなります。

Needs–必要性

日本でも「ニーズ」という言葉が広く使われているので馴染みがあるかもしれませんが、この項目では顧客が何を必要としているのか、そしてどれほど必要なのかを確認します。

“Needs” は、顧客が自社製品とマッチングしているのか、導入検討の可能性はあるのかなど、営業的な確度を測る上でも重要な物差しです。

Timeframe–導入時期

“Timeframe” はその顧客が検討している導入時期、また導入するまでにかかる期間を指します。

優秀な営業成績を収めるためには、毎月継続的に成約を獲得する必要があります。そのためには、それぞれの顧客がいつ頃導入してくれそうなのかを知った上で営業計画を立てることが有効です。顧客がいつ導入したいのか、導入時期や契約までにかかる期間を把握し、アプローチのタイミングや各フェーズでの関わり方を考えてみましょう。

BANT情報がもたらすメリット

それでは、BANTを押さえることで得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

成約までのプロセスが明確になる

アタック先顧客の動かせる金額はどの程度で(=Budget)、誰がそのGOサインを出せる決裁者(=Authority)かが分かれば、キーパーソンに対し適切なプラン提案ができるでしょう。
その際、顧客と自社製品の必要性(=Needs)について合意できていれば、稟議も通りやすいはずです。
顧客が検討中の導入時期(=Timeframe)に合わせて提案プランを考え、タイミングを見極めたアクションを起こすことで相手の「YES」を引き出しやすくなるでしょう。

組織の営業品質を平準化できる

ヒアリング事項を決めていないと、担当者によって把握情報にムラが出てきてしまう恐れがあります。
BANTのヒアリングを徹底することで、最低限確認しなければならない情報を網羅できるため、一定の営業品質を担保できるでしょう。

顧客との認識のズレが起きにくい

費用感や本質的なニーズを押さえられていないと、提案内容にズレがでてしまい、契約を断られてしまったり、再提案を依頼されてしまうことがあります。
また、受注したものの利用開始までのスケジュールをしっかり確認しておらず、契約後トラブルが発生してしまうようなこともあり得ます。
BANTを押さえることで、相手との大きな認識のズレが起きにくくなり、上記のような失敗を回避しやすくなります。

BANTが揃わないと何が起きる?

BANT情報を網羅出来ていない場合、以下のような営業トラブルが想定されます。

Bが無い場合

・実は直近で使える予算が無かった…
・提案内容と顧客の想定費用とのギャップがあり、契約意欲が低下してしまった

相手の予算を把握できていない場合、上記のように提案自体が白紙になってしまう可能性が高いです。もっとも重要な項目なので、出来るだけ早めの段階で確認しましょう。

Aが無い場合

・決裁者が実は別の担当者で、再度ヒアリングからやり直しに…
・決裁フローが想定より多く、今月受注のはずが来月になり目標未達に…

顧客の決裁者と決裁フローを確認できていないと、想定していた受注時期からズレてしまったり、再ヒアリングや提案の練り直しが必要になってしまうことも。
最短距離で受注できるように、この項目も忘れずに確認しましょう。

Nが無い場合

・見当違いな提案をしてしまい「いらない」と一蹴されてしまった
・フロントの担当者は必要性を感じていたが、いざ提案したら決裁者から「必要ない」と却下された…

ニーズを聞けていないと相手の欲しているものが分からず、顧客側とはすれ違いになりやすいです。上記のようなことを避けるためにも、傾聴を心がけましょう。

Tが無い場合

・導入時期が今期中だと思っていたら、顧客は来期の想定でまた出直すことに…
・顧客の中でスケジュールが決まらず、なかなか成約に至らない

スケジュールを握れていないと、こちらが想定していた導入時期との大幅なズレが発生したり、案件化前にこまごまと顧客対応し続けるなど、業務負担になる可能性も。
もし相手に想定導入時期が無い場合は、こちらから積極的に提案することでスケジュールを握るようにしましょう。

BANT情報ヒアリングのコツ

では実際にBANT情報をヒアリングする際には、どのように顧客から引き出せばいいのでしょうか。
以下に顧客への具体的な質問例を記載していますので、営業時の参考にしてみてください。

B:予算を把握するための質問

「ご提案内容を考える上で参考にしたいので、おおよその予算感を教えて頂けますか?」

予算は提案段階だとまだ決まっていないことも多いので、提案前には上記のように質問してみましょう。ずばり「予算はどれぐらいか」聞くのは不躾ですし警戒されてしまうので、「提案する上で参考にしたい」という点を強調することで顧客も答えやすくなるでしょう。

A:顧客の決裁フローを知るための質問

「この費用感の場合、どなたが最終決裁者になりますか?」

企業がある程度の規模になると、部長が決裁できるのは〇〇万円まで、事業部長は〇〇万円まで、のように予算規模に応じて最終決裁者が決められています。
誰の承認を得る必要があるのか、承認を得るフローがどうなっているか、最終決裁者とのコミュニケーションが可能かなどを確認しましょう。

「もし導入される場合、どのように承認を取られるのでしょうか?」

例えば「部長承認」が必要だとしても、「直属の上司に説明する」だけなのか「月例の会議で提案・承認を取る」必要があるのかなど、できるだけ具体的な動きまで把握することを心がけましょう。これにより稟議を上げる担当者のサポートを行いやすくなります。

N:ニーズを探る/ホンネを引き出すための質問

「この目標を立てているのって、〇〇な背景があったりするのでしょうか?」

相手のアウトプットには、何かしらの意図があります。「なぜ、こうしているのか?」「どうしてそうなったのか?」など掘り下げてみましょう。
仮説を立てながら「〇〇だから、とかですかね?」のように聞いてみると、相手も「実は…」と本音を打ち明けてくれることがあります。

T:導入時期(スケジュール)を確認するための質問

「○月には走り出しのイメージですか?」

導入時期は検討していない企業も多く、営業から具体的な時期を示して目安を聞いてみると良いでしょう。場合によってはこちらでスケジュールを引き、顧客の担当者内で確認してもらうと良いです。

「もし仮に〇月頃から利用開始するとしたら、稟議に出すのは〇月くらいでしょうか?」

導入までには予算承認や社内稟議などいくつかのフローがあります。その部分を明確にしていくことで、具体的な提案のタイミングが見えてきます。

BANT活用の注意点

最初から全て揃えようとしなくてOK

フレームワークにありがちですが、「埋める」ことが目的にすり替わり、一問一答のような形になってしまい話題同士に繋がりがなくなってしまうことがあります。
また、窓口の担当者では把握していない情報でも、決裁者なら知っている場合もありますので、「今日のアポで全項目を押さえなければ!」と焦りすぎることはありません。
「今回はこの項目を聞いてみよう」など毎回のヒアリングにゴール設定しておくと深い情報を聞き出しやすいです。

BANTを過信しすぎない

BANTはあくまでフレームワークにすぎず、重要なのは顧客からの信頼を得るための一つ一つのアクションです。連絡はレスを早くする、質問にはきちんと答える、分からないことがあれば都度聞くなど基本的なコミュニケーションを丁寧に行い、信頼関係を構築することが大切です。

また、表層をなぞるような質問を繰り返すのではなく、相手の本質的な課題を見つける観察眼と、その課題を解決するための提案力が本来営業に求められる能力です。
フレームワークにとらわれすぎると、ついつい本質的な部分がおろそかになりがちです。あくまで顧客からの信頼を得て受注するために、参考にしたい情報がBANT情報ということを忘れないようにしましょう。

まとめ

BANTは営業担当者のミッションを遂行する上で有用なフレームワークです。
我流でやっていてどうにも成果がでない、いつもうっかり確認漏れをしてしまい営業機会を逃してしまうという方は、この記事でご紹介した情報をもとにヒアリングを見直してみてください。

ヒアリングが苦手な方は、ロープレの反復練習をおすすめします。
以下の記事で具体的なやり方やコツをお伝えしているので参考にしてみてください。

また、そもそもどのように顧客との会話を組み立てていけばいいか分からない、あるいは部下や後輩の指導に課題感がある場合にはトークスクリプトを作成するのもおすすめです。
以下記事にてやり方やコツを解説しているので、今後の営業活動にお役立てください。