2021.09.28 営業Tips

SWOT分析とは?やり方と戦略目標を立てるコツ

マーケティングに活用できるフレームワークにはさまざまな種類がありますが、その中でも「SWOT分析」は集めた情報を解釈して戦略を立てることに特化した手法です。SWOT分析という言葉は聞いたことがあっても、実際に使ったことはないという人も少なくないのではないでしょうか。
今回は、SWOT分析の概要や基本的なやり方、戦略目標に落とし込むコツを解説します。

SWOT分析とは

SWOT分析とは、ビジネスにおけるフレームワークの1つです。主にマーケティング戦略を立てる際に使われ、環境因子を内部・外部/プラス・マイナスの軸で整理し、そこから目標達成のための戦略を見出す手法です。

SWOT分析で着目される環境因子は以下の4つです。

・強み (Strengths):目標達成のために生かせる、企業の特性
・弱み (Weaknesses):目標達成のために克服しなくてはならない、企業の特性
・機会 (Opportunities):達成のためにプラスの要因となる外部環境。市場の拡大や競争優位性など
・脅威 (Threats):達成のためにマイナスの要因となる外部環境。市場の縮小や競争激化など

これら4つの頭文字を取って「SWOT」と呼ばれています。SWOTの4要因を組み合わせて分析することで、目標達成のためにどんなことをすべきなのか、とくに重視すべき課題や掴むべきチャンスなどが見えてくるでしょう。

内部環境と外部環境の分け方

SWOT分析では、内部環境と外部環境をしっかり区別することが大切です。

内部環境:強み、弱み 自社でコントロール可能なもの
外部環境:機会、脅威 自社でコントロールできないもの

なぜSWOT分析をするのか

ビジネスにおいて、自社やプロジェクトを取り巻く環境が現在どのような状態にあるか把握することは必須です。そして自社・市場・顧客・競合などの動向をもとに戦略目標を立てることがSWOT分析の目的です。(後述しますが、事実調査は主に「3C分析」や「PEST分析」で行います)

これにより、描くプランや未来像と内外の環境との間にどんな関係があるかを整理し、仮説を立てたのち、調査・分析による裏付けを取り、立てた仮説と合わせて検証するという一連のワークを行いやすくなります。

SWOT分析のやり方

SWOT分析は、事前準備と4要素の抽出・仮説立て、それぞれの要因の調査・分析という順番で行います。

事前準備

SWOT分析を行う前に、まず「3C分析」「PEST分析」で最も基本的な情報収集を行います。その集めた情報を解釈するフレームワークが「SWOT分析」なのです。

3C分析:市場(顧客)・競合・自社の3つのポイントで行う環境分析。商品やサービスを取り巻くミクロな環境を見る。インターネットのトレンドや価格調査、自社の経営資源や活動内容から取得。
PEST分析:政治・経済・社会・技術の4つのポイントで行う環境分析。世の中全体の変化に焦点を当てたマクロな環境を見る。ニュースや業界紙などから取得。

順番はPEST分析(マクロ、全体的な現状)→3C分析(ミクロ、商品やサービス周りの現状)と行います。これは、全体像を大まかに掴んでから細かい部分を見ていく方が正しく把握しやすいためです。3C分析もPEST分析も情報収集なので、正確さが命です。間違った情報や、偏った情報には十分注意しましょう。

3C分析について、詳しくはこの記事で解説しています。

SWOTの4要素

十分な事前準備ができたら、集めた情報の中からSWOTの4要素を抽出します。進めようとするプロジェクトや作りたい商品について、外部環境と内部環境のそれぞれを整理し、仮説を立てましょう。

例えば、あるスポーツジムが自宅で動画などを利用して受けられるプログラムやオンラインジムなどの展開を考えているとします。このとき、具体的なSWOTの4要素としてはどんなことを抽出すれば良いのか、やり方とともに確認してみましょう。

強み (Strengths)の抽出

達成したい目標や進めようとしているプロジェクトについて、競合他社と比べて自社が強いと言える部分を明確にします。競合の弱みを考えたとき、自社ではそれをカバーできていると思うなら強みになりうるでしょう。他にも、顧客からの評価が高いポイントは強みと言えます。

例)スポーツジムには、これまで積み重ねてきたノウハウがある。人気講師のプログラムやオンライン授業といったコンテンツの充実、顧客満足度につながりやすいサポートシステムなどは競合となりうるコンテンツやオンライン完結型のジムと比べて強みになる。

弱み (Weaknesses) の抽出

達成したい目標や進めようとしているプロジェクトで、競合他社と比べて自社に欠けている部分、弱い部分を明確にします。競合他社の強みを考えたとき、自社にはない部分だと思えばそれは弱みと考えられるでしょう。また、顧客からのクレームや要望も自社に足りない部分と言えます。

例)競合コンテンツと比べて独自性・エンターテイメント性に欠ける部分がある。また、オンライン専門のジムと比べたとき、ターゲット層の違いから十分な顧客リサーチができていない可能性がある。

機会 (Opportunities) の抽出

プロジェクトを取り巻く環境において、機会となりえることを見ていきます。機会とは、環境の変化のうち、プラスの影響になりえるもののことです。自社だけでなく、競合他社にとっても同様にチャンスとなることを見ていくため、強みと混同しないよう注意が必要です。あくまでも、環境の変化によって顧客や市場においてもプラスの影響があるものを抽出します。

例)コロナ禍による外出自粛期間など、自宅で過ごす時間が増えた人にとって、いかに自宅での時間を充実させるか、運動不足を解消するかは大きな問題となっている。そこで、自宅での時間を充実させながら運動不足を解消する手段として、スポーツプログラムやオンラインジムなどが注目されている。

脅威 (Threats) の抽出

プロジェクトを取り巻く環境において、脅威となりえることを見ていきます。環境の変化のうち、そのまま放置しているとマイナスの影響になってしまうものを指します。これも同様に、自社だけでなく競合他社、顧客や市場においてもマイナスになりえることを考えましょう。弱みと混ざらないように注意が必要です。

例)オンラインプログラムはいずれもインターネット回線がカギなので、混雑によってトラブルが多発する可能性がある。また、生活様式が以前の状態に戻ることで、自宅で過ごす時間が減り、オンラインコンテンツそのものが縮小するリスクも考えられる。

外部要因分析(機会と脅威)

抽出された外部要因(機会・脅威)について、裏付け調査と分析を行っていきます。機会や脅威それぞれとなることはもちろん、機会でも脅威でもあることについて整理しましょう。

PEST分析によるマクロ視点の情報をもとに、ニュースや業界紙からだけではわからないことも多いため、関連団体・顧客・外注先などからの情報にも注目します。

内部要因分析(強みと弱み)

抽出された内部要因(強み・弱み)について、裏付け調査と分析を行います。これも、強みでもあり弱みでもあるポイントを見落とさないようにしましょう。製品・技術など中核となる部分はもちろん、経営や財務、人材や組織、業務量などについても見ていきます。

3C分析のうち「自社」に関する分析が、強み・弱みの裏付けと関連するでしょう。経営状態を「見える化」したり、技術レベルの正確な把握、人材のアセスメント、業務量の調査など、自社内の状況を多角的に分析します。

SWOT分析のコツ

SWOT分析で戦略を立てる際は、自社の強み・弱みに対して機会・脅威をそれぞれ掛け合わせて解釈する「クロスSWOT分析」による多角的な分析が重要です。

先程例に挙げた、スポーツジムが自宅で動画などを利用して受けられるプログラムやオンラインジムなどの展開を考える場合のクロスSWOT分析について考えてみましょう。

強み×機会(SO戦略)

強みを生かして機会を逃さない、うまく捉える戦略を立てるというもので、最も重要視される戦略です。現在ある機会(チャンス)の利益を最大限に得られるため、競争優位性を高めるための事業、スタートアップ企業などにおすすめです。

例)
強み:これまで積み重ねてきたノウハウ、人気講師、サポートシステムなど
機会:自宅での時間を充実させながら運動不足を解消する手段として、オンラインジムやプログラムが注目されている

強みと機会を掛け合わせると、以下のような戦略が考えられます。

・オンラインジムやプログラムに人気講師を起用する
・動画サイトなどにはない充実のサポートシステムを売りに
・スポーツジムとして積み重ねてきた信頼や実績を見せる

弱み×機会(WO戦略)

機会をうまくキャッチし、利益につなげるために弱みを克服する、または補強する方法です。売上が伸び悩んでいる商品や企業におすすめです。

例)
弱み:独自性やエンターテイメント性、ターゲット層への理解が不十分など
機会:自宅での時間を充実させながら運動不足を解消する手段として、オンラインジムやプログラムが注目されている

弱みと機会を掛け合わせると、以下のような戦略が考えられます。

・独自性やエンターテイメント性を得るため、既存の競合コンテンツをよく研究する
・ターゲット層とそのニーズをリサーチし、より注目されやすいプログラムを作る

強み×脅威(ST戦略)

自社の強みを生かして脅威を切り抜けるための方法です。競合他社に対する差別化など、自社ならではの視点でダメージを抑えます。

例)
強み:これまで積み重ねてきたノウハウ、人気講師、サポートシステムなど
脅威:インターネット回線の混雑によるトラブル、オンラインコンテンツの縮小リスク

強みと脅威を掛け合わせると、以下のような戦略が考えられます。

・回線トラブルに備え、配信コンテンツを一定期間視聴できるようにするなどリスクヘッジをし、顧客満足度を維持する
・オンラインコンテンツが縮小しても、人気講師など魅力あるコンテンツを提供することで生き残りやすくする

弱み×脅威(WT戦略)

自社の弱みに脅威が合わさるという、最悪の自体に備えるリスクマネジメント方法です。外部要因による悪影響を最小限にとどめることが目的です。

例)
弱み:独自性やエンターテイメント性、ターゲット層への理解が不十分など
脅威:インターネット回線の混雑によるトラブル、オンラインコンテンツの縮小リスク

弱みと脅威を掛け合わせると、以下のようなリスクマネジメントが考えられます。

・優位性を担保できるコンテンツに絞る、ターゲット層を限定しコンテンツの質向上を狙うなど守りの姿勢でリスクを最小化する
・市場が成熟し、レッドオーシャンとなった場合には撤退を検討

まとめ

SWOT分析とは、達成しようとする目的・目標のために、内外の環境因子を分類・整理した上で解釈を行う手法のことを指します。戦略立案に特化したフレームワークなので、「3C分析」や「PEST分析」など他の手法と組み合わせ、事前の情報収集をしっかり行いましょう。

集めた情報を元に仮説を立てたら、さらに裏付け調査や分析を進めていきます。また、抽出した4要素を組み合わせた「クロスSWOT分析」を行うことで、取るべき戦略をより明確化することも重要です。効率的な戦略立案に、ぜひSWOT分析を活かしてみてはいかがでしょうか。