2023.03.09 営業Tips

セールスイネーブルメントとは?取り組むメリットと効果を出すための7つのポイント

セールスイネーブルメントとは、テクノロジーを活用して効果のある営業方法を仕組み化することです。この記事では、なぜ近年注目されているのか、取り組むことでどのようなメリットがあるのか、また、具体的にどのように進めていくのか、人材育成という視点から解説します。

セールスイネーブルメントとは

セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、営業組織が「継続的に営業成果を出し続けるための仕組みを構築すること」です。また、その実現のためにテクノロジーを活用して組織横断的に取り組むという点が大きな特徴です。
ここで言う「営業成果」とは、企業の成長に大きく影響するようなものです。例えば「予算を達成する」「売り上げが向上する」などの数字に直結するものや、「新規顧客の獲得数が増える」「既存顧客のリピート率向上や案件の拡大」といったことも含まれるでしょう。

セールスイネーブルメントは営業成果を出し続けるための仕組みの構築ではありますが、先述の通り対象者は営業担当者だけに限らず、組織体制の構築や営業活動の支援、人材育成に関わる人も含まれます。

セールスイネーブルメントは、この3つの活動の起点をいずれも『営業成果』とするのです。その中でも、今回は人材育成について解説します。

従来型の人材育成とセールスイネーブルメントの違い

従来型の人材育成は、企業や部署によって差はあるものの、座学とOJT(On the Job Training、実務を通して仕事の方法を覚えること)を取り入れて進めます。業務に関する全般的な流れを座学で学び、既存業務を中心としてOJTで実践的な業務を学びます。

この育成方法も、主に新卒や中途採用においては、ある程度の効果をあげてきました。しかし、座学が実務ですぐに役立つとは限りません。またOJTは上司や先輩社員などトレーナーの得手不得手や教育スキルに大きく左右されるため、トレーニーが必ずしも業務に関する普遍的かつ成果の出るノウハウを学べるわけではありません。

一方、セールスイネーブルメントでは成果が出る営業手法を言語化してパッケージとし、対象となる社員全員に教育します。同じ教育内容を対象者である営業組織の全員が受講するため、トレーニー側が学ぶ内容にばらつきが出ることはありません。

また、セールスイネーブルメントでは定期的に育成プログラムの効果を検証し、フィードバックを元に改善します。営業活動の精度が高まるため、誰も取り組んでいない業務も行えるようになります。検証と改善を繰り返すことで、最適化・効率化された営業活動に繋がり、従来より有意義なプログラムが構築できるでしょう。

このように人材育成にセールスイネーブルメントを導入すると、対象者全員の営業スキルを底上げすることが期待できます。また、教える内容が統一されているため、トレーナー側の負担も軽減されます。

セールスイネーブルメントが注目されている背景

テクノロジーの進歩によって質の高いリードが大量に供給されるようになりました。テレビや雑誌の広告だけでなく、リスティング広告やSNS広告などのWEBマーケティングで多くのリードを獲得し、さらにMA(マーケティングオートメーション)を活用してリードの質をあげている企業も多く見られます。

つまり現代の営業活動には、質・量ともに向上したリードをさばける効率的な体制が求められているのです。しかし、多方面からのマーケティングで確実にリードが増えているにも関わらず、そのリードを活かしきれていない企業が多いのが現状です。

マーケティングによってどんなに多くのリードを獲得しても、最終的に商品やサービスの受注につながらなければ成果とは呼べません。また営業活動が属人化している場合、営業活動の中身が可視化されず、担当者によって営業手法がそれぞれ異っています。これでは一定の成果は得られず、トップセールス以外は成果を生み出しにくい状態が続きます。

そこで注目されるのが、成果につながる営業、セールスイネーブルメントです。セールスイネーブルメントでは、トップセールスの営業手法を可視化して仕組み化し、誰もが同じクオリティで営業活動を行うことを実現します。営業力を底上げし企業全体の組織力を強化するためにも、セールスイネーブルメントが注目されているのです。

セールスイネーブルメントに取り組むメリット

セールスイネーブルメントに取り組むことで、人材育成と営業活動において多大なメリットを享受できます。それぞれのメリットについて紹介します。

人材育成

セールスイネーブルメントでは実践的な手法を学ぶため、営業担当者の立ち上がりが早くなり、成果をあげることができます。またマネジメント側にとっては、人材育成にかける時間が減り、他の業務に時間を有効活用できる点がメリットです。

企業全体にとっても、セールスイネーブルメントにより人材育成にかかる費用を削減できるというメリットが得られます。長期的にセールスイネーブルメントを実施することで、削減できる費用もさらに増大します。

営業活動

セールスイネーブルメントでは、営業担当者が学ぶ営業手法が統一されます。営業手法が標準化されることで、どの営業担当者にも高い成果が期待できる点は大きなメリットです。

マネジメント側にとって、営業担当者の営業手法が統一されることで、営業活動において施策を実施し、施策結果を評価して改善、再び施策を実施する…のサイクルが実現できます。このサイクルを回すことで、さらに精度の高い営業手法を構築することにもつながるでしょう。また企業全体にとっても、セールスイネーブルメントにより営業活動が最適化されることで、売上の向上が見込めるメリットがあります。

セールスイネーブルメントの進め方

セールスイネーブルメントは、その企業の経験や実務に基づいて独自に構築していくものであるため、導入するまでにある程度の時間がかかります。主な進め方は以下の通りです。各プロセスで何をするのか具体的に解説します。

  1. 営業データの蓄積・管理
  2. セールスイネーブルメント部門の設置
  3. 育成プログラムの企画と実施
  4. 効果検証

1. 営業データの蓄積・管理

セールスイネーブルメントは実践的な営業活動を実現するためのプログラムです。それを可能にするために、プログラムは蓄積した営業活動に関するデータに基づかなくてはなりません。

まずは、以下のような営業活動に関するデータを可能な限り多く集めましょう。データは量だけでなく質も大切です。営業活動と成果の関係性を正確に洗い出すためにも、詳細なデータを蓄積し、適切に管理することが求められます。

  • 売上額
  • 受注率
  • 顧客情報
  • 商談の履歴
  • 営業担当者に対する教育の履歴

2. セールスイネーブルメント部門の設置

セールスイネーブルメントは営業部門だけでなく人事部門にも関わります。また、実施にはツール開発が不可欠となるため、開発部門などのIT関連の部署とも密接な関係が必要です。

このように多くの人と関わるので、特定の部門内にセールスイネーブルメント部門を据えると機動性に欠けてしまうリスクが生まれます。それを防ぐために新たにセールスイネーブルメント部門をつくり、どの部門とも関わり合いつつ、独自の活動ができるようにしておきましょう。

3. 育成プログラムの企画と実施

営業活動に関するデータを分析し、効果的な営業手法を言語化します。そして、その結果に基づいて営業担当者を育成するプログラムを企画しましょう。

ここで企画されたプログラムが、セールスイネーブルメントのプロトタイプです。プロトタイプのため修正・改善することが前提はありますが、まずはそのままの形で実現できること、特定の人物でなくても優れた営業活動を行える汎用性があることが条件となります。このプロトタイプを営業活動に関する組織全体で共有し、実務で実施していきましょう。

4. 効果検証

プロトタイプを営業活動の実務で実施した結果、どのような効果が得られているのかを検証します。セールスイネーブルメントを開始する前に具体的な営業活動の目標(顧客数を〇人にする、リピーター率を〇%にする、など)を立てておくと、効果が検証しやすくなるでしょう。

検証の結果、思うような成果が得られていないときは、どの部分に課題があるのかを分析し、改善策を考案します。また、プロトタイプが営業活動の場面で実施しづらい場合も改善が必要です。

セールスイネーブルメントは、繰り返し効果を検証し改善していくことが前提となっています。そのため常に現状に即した方法にアップデートしていきましょう。

セールスイネーブルメントの効果を高めるための7つのポイント

セールスイネーブルメントは効果のある営業活動を実現するためのプログラムです。さらに効果的なプログラムにするためには、次のポイントをおさえておきましょう。

  • マネージャーの選任
  • 営業担当者のスキルの把握と育成
  • 営業部門内のコミュニケーション
  • コンテンツの作成
  • 営業部門の管理
  • 最新ツールの活用とサポート
  • マーケティング部門と営業部門の情報共有

マネージャーの選任

セールスイネーブルメントでは、営業活動に関する情報の収集と言語化・体系化、そして実践できる形にして営業担当者に伝えるというサイクルを実施するマネージャーが必要です。なお、マネージャー自身が優れた営業担当者であることが望ましいですが、これは必須条件ではありません。

従来型の人材育成の方法であるOJTでは、トレーナーが自分自身の経験に基づいた営業手法を新入社員に伝えるというスタイルのため、トレーナー自身の営業・教育スキルに成果が大きく左右されていました。一方、セールスイネーブルメントは普遍化されたプログラムで誰もが同じ営業手法を習得できるので、OJTのような弊害は起こり得ません。

ただし、新しくセールスイネーブルメントを導入するときは、従来型の人材育成方法と異なるため、周囲から懐疑的に受け取られたり、積極的な協力を得られなかったりすることがあるでしょう。そのような場合は、セールスイネーブルメントを実施するマネージャーとして優れた営業担当者を任命することをお勧めします。

優れた実績を持つ営業担当者をマネージャーにすることで、周囲もプロジェクトに対して一目置くようになり、成果に期待する空気も生まれやすくなるでしょう。また、結果的にセールスイネーブルメント自体をスムーズに実施でき、成果も上がりやすくなります。

営業担当者のスキルの把握と育成

セールスイネーブルメントは、誰もが同じ営業活動スキルを習得できる普遍化されたプログラムではありますが、実施するときは営業担当者個人のスキルに合わせて調整することが求められます。

例えば、新規開拓を得意とする営業担当者と継続案件の獲得を得意とする営業担当者では、改善すべきポイントは異なるでしょう。セールスイネーブルメントのマネージャーは営業担当者一人ひとりのスキルを正確に把握し、課題を明らかにしたうえで、担当者に合わせた育成を実施していくことが必要です。

営業部門内のコミュニケーション

セールスイネーブルメントは営業担当者一人ひとりに合わせて実施されますが、マネージャーと営業担当者の関係だけで成立しているのではありません。常に新しい情報を取り入れ、営業部門が一丸となって目標を達成するためにも、営業部門内で密にコミュニケーションを取ることが必要です。

まずは、セールスイネーブルメントを実施して明らかになった課題や課題解決のための効果的な対応などを言語化して、すべての営業担当者が実施できる形にまとめます。そして、営業部門内で新たなノウハウとして共有すると、より効果のある営業手法を実現できるでしょう。

つまり、営業部門内での密なコミュニケーションが、セールスイネーブルメントにおける成功のカギを握っているともいえます。マネージャーは、すべての営業担当者に「営業スキルを向上したい」という意識だけではなく「営業部門全体の成績を上げたい」という意識を持てるように指導し、その目的のためにも各自の営業活動ノウハウを教え合うように促しましょう。

コンテンツの作成

セールスイネーブルメントでは、集積した営業ノウハウをコンテンツに昇華しなくてはいけません。このコンテンツが普遍的で、なおかつ誰でも実施できるものであるならば、営業スキルの向上は容易になるでしょう。なお、コンテンツは以下の情報などをベースとして作成します。

  • 商談化率に至るきっかけになった資料
  • 商談時に活用しやすい外部資料
  • 営業成績が優れている社員によって提供された営業活動のポイント
  • 営業成績が優れている社員の活動パターン分析

営業部門の管理

セールスイネーブルメントは常にフィードバックと改善を行うことで、より実用的かつ成果が出る営業手法の確立につなげることができます。フィードバックと改善を実施するためには、営業活動を数値化し管理することが不可欠です。セールスイネーブルメントを実施する前に、活動を数値化するメソッドを開発しておきましょう。

例えば、商談化率が上昇したというだけでは、どのコンテンツが作用したのかがわかりません。コンテンツと営業成果の関連性がわかるように管理シートを作成し、変化と成果の関係を視覚化しておきましょう。

最新ツールの活用とサポート

セールスイネーブルメントのコンテンツ作成や結果分析は、最新ツールを活用して実施してみましょう。セールスイネーブルメント向けのツールも多数提供されているので、使いやすく、自社に合うものを選んで活用しましょう。

セールスイネーブルメントに活用されるツールとしては、『CRM(​​「Customer Relationship Management」の略、日本語では「顧客関係管理」)』と『SFA(​​「Sales Force Automation」の略で、日本語では「営業支援システム」)』が一般的とされています。『CRM』とは顧客情報を管理し、営業部門のパフォーマンス向上に利用できるツール、『SFA』とは個別案件の管理やメール配信を実施するツールです。

ただし、最新ツールを導入したからといって、すぐに成果が出るわけではありません。セールスイネーブルメントのツールはあくまでも営業手法をコンテンツ化し、フィードバックや成果を可視化するためのものなので、ツールから提示された情報を実際の営業活動に活かせなければ成果には結びつきません。定期的に運用を見直し、必要に応じて改善していきましょう。

マーケティング部門と営業部門の情報共有

セールスイネーブルメントは営業手法の改善のために実施されますが、営業部門内だけに情報を留めているのでは効果を最大化することができません。

そもそもセールスイネーブルメントは、「マーケティングによって獲得したリードを有効活用できていない」という課題から誕生したものです。セールスイネーブルメントによって得られた成果を営業部門内だけに情報を留めるのではなく、マーケティング部門に伝えることで、さらに高い質のリードを獲得できるでしょう。そうなれば営業担当者も獲得したリードの有効活用が可能になり、高効率で受注につなげることが可能になります。

セールスイネーブルメントの3つの取り組み内容例

セールスイネーブルメントの取り組みは、以下の3つの分野に分けることができます。

  • 研修や講習
  • 資料作成
  • ツールの活用

それぞれの分野において、どのような内容を実施するのか具体的に見ていきましょう。

研修や講習

 営業担当者が実践的な営業スキルを習得するためには、研修や講習が必要です。ただし、従来のように一般的な知識や情報を提供するのではなく、実践的かつ営業成果につながる知識・情報の提供が求められます。

実践的かつ成果につながる研修や講習を実施するためには、研修・講習のプログラムの作成を独自に行うことをおすすめします。過去の営業成果や実際に有効であった営業手法を分析し、営業ノウハウのコツを抽出してまとめることで、それが実現できるでしょう。

資料作成

実績のある優秀な営業担当者の営業手法を分析し、成果の出る営業手法として仕組み化します。仕組み化した内容は研修や講習でも伝えますが、資料の形でまとめて常にいつでも取り出せる状態にしておくことも必要です。

資料として作成しておくと、営業担当者自身が「この場合はどのようにアプローチすればよいのだろう」と疑問を感じたときにすぐに実践的な答えを得られるようになります。マネージャーの業務負担を軽減できるだけでなく、営業担当者の業務に対する満足度の向上にもつながるでしょう。

ツールの活用

有効な営業活動を仕組み化するためには、膨大な資料や情報をまとめ、コンテンツ化することが不可欠です。作業を簡略化・正確化するためにもCRMやSFAなどのツールの活用が必要になります。ツールを効果的に活用し、まず営業活動の言語化、次に標準化して、最終的には仕組み化を実現していきましょう。

また、セールスイネーブルメントでは常にフィードバックの獲得と改善を実施し、営業活動の仕組みがより良いものになるように運営してかなくてはいけません。そのためにも、ツールの継続的な活用が求められます。使いやすさに注目してツールを選定し、継続可能な仕組みを構築していきましょう。

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効果のある営業手法の仕組みを普遍化・コンテンツ化するためには、適切なツールが不可欠です。さらに、セールスイネーブルメントでは常にフィードバックと改善を実施していくため、ツールが使いやすいものであることも求められます。

どのツールを導入するか迷ったときは、ぜひ『shouin for リモートセールス』をご検討ください。『shouin for リモートセールス』は営業活動に関するノウハウを学習コンテンツにしたり営業担当者の育成、情報分析に活用できるツールです。使いやすさにこだわった設計で、持続可能な営業活動スキルの向上を実現します。

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