リスキリングとは、技術⾰新やビジネスモデルの変化に対応するために必要なスキルを獲得すること、あるいはスキルを習得させることです。新しい職業に就くときや、現在の職場で必要とされるスキルが変化したときに実施されます。本稿ではリスキリングの意味やメリット、注意点についてまとめました。
もくじ
リスキリングとは
リスキリング(reskilling)とは、新しいスキルを⾝につけることやスキルを習得し直すことを意味する⾔葉です。経済通産省では、以下のように定義しています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの⼤幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
引⽤:経済産業省のWEBサイト>経済産業省/リクルートワークス研究所「リスキリングとは―DX 時代の⼈材戦略と世界の潮流―」資料 P.6(2023/03/08)
リスキリングは、すでにスキルがある⼈を対象とした取り組みで、⼀般的に企業主導で⾏う再教育のひとつとして実施されます。 リスキリングは決してDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する⾔葉ではありませんが、近年はDX 化を推進する企業が多く、それに応じてスキルを得る必要があるため、「DX化に関わる業務を習得すること」という意味でもしばしば使われています 。また、リスキリングは企業主体で⾏うことが殆どですが 、その成功は学ぶ側の意欲や自発的な行動が鍵を握ります。
リカレントとの違い
リカレント(recurrent)もリスキリングと同じく、新しいスキル習得を⽬指す⾏為を指しますが、働きながらスキルアップやスキル獲得を⽬指すリスキリングとは異なり、リカレントは⼀時的に仕事から離れることが前提です。例えば、⼤学や⼤学院に⼊学してスキルアップを⽬指したり、職業訓練所や養成所などに⼊所して新しいスキルを習得します。
また、リカレントは自主的にスキルを得ることです。リスキリングのように職場で⼀律的に実施することはあまりありません。例えば、セールスマネジャーとして働いていた⼈が、現場で経営についての知識と実践的⼿法の必要性を実感し、MBAの資格取得のために⼤学院に⼊学し直すことはリカレントに分類できるでしょう。
リスキリングが注⽬されている背景
近年、世界的にリスキリングに対する注⽬は⾼まっています。そのきっかけは、毎年1⽉にスイスのダボスで開催される世界経済会議(⾮営利財団「世界経済フォーラム」の年次総会。通称、ダボス会議)です 。そしてその流れを受け、⽇本でも2022年10⽉に 岸⽥⽂雄総理がリスキリングのための⽀援制度を政策に盛り込む考えを表明しました。
環境に対応したいと考える企業が増えた
現在、DXの推進により職場の環境は⼀気にデジタル化され、デジタル技術を扱えなければ対応できない業務も増えたことにより、社員に関連スキルの習得が求められるようになりました。デジタルやコンピュータに関する知識を習得することはもちろんのこと、DXによって可視化できるようになったデータを正しく扱うスキルが必要になります。
また、新型コロナウイルスの流⾏によりテレワークが普及したことで、新しい仕組みや業務に対応できることが社員に求められるようになりました。業務をスムーズに遂⾏させ、なおかつ社員の業務負担に偏りが⽣じないためにも、会社組織全体でリスキリングを実施することが急務といえるのです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に不可⽋
DX化により業務フローも変わりました。新しいフローに合わせて効率良く業務を遂⾏していくためにも、マネジメント側が社員のスキルや能⼒を正しく把握し、適切な部署や役割に配置することが求められています。
また、業務の効率化や⽣産性、正確性の向上をおこなうことが、企業成⻑に必要不可⽋です。企業が従業員の能⼒・スキルを再開発するための組織的な仕組み作りをするためにも、リスキリングが必要となっています。
雇⽤の維持
DXの推進は業務に⼤きな変⾰をもたらした結果、不要になった業務や必要⼈員数が⼤幅に減った業務も少なくありません。それに対して、デジタル関連の業務は⼈材不⾜に陥っています。このような⼈材の過不足を社内で対応できるようにするためにもリスキリングは役立ちます。リスキリングにより従業員⼀⼈ひとりに新たな能⼒を開発することで、雇⽤の維持が可能になります。
⼈材不⾜
特に営業職において⾼い離職率が問題となっています。また採⽤の⾯でも、求⼈数と⽐べて応募者や対象となる⼈が少なく、採⽤の難しさが⼈事や経営陣を悩ませていることも多いのではないでしょうか。さらにOJTによる営業スキルの習得は時間や費⽤がかかり、トレーナーとなる先輩や上司の仕事が遅れることによる損失も看過できません。それを解決するための一案としてリスキリングがあります。営業経験のない⼈材も営業スキルを習得することで、⼈材不⾜に対応できるようになると考えられます。
リスキリングのメリット
リスキリングを積極的に実施すれば、企業は次のようなメリットを獲得できるでしょう。
- アイデアが⽣まれやすくなる
- 業務を効率化できる
- 企業の⽂化や社⾵を守れる
- ⼈材採⽤や育成のコストを抑えられる
アイデアが⽣まれやすくなる
リスキリングにより社員が新しい知識やスキルを獲得できれば、時流に合うアイデアが⽣まれやすくなります。新しいアイデアに基づいて新規事業の開発や既存事業の改善を⾏えば、企業の⾶躍的な成⻑も夢ではありません。
また、リスキリングを継続的に実施することで、新しい考えを取り⼊れようとする空気が社内に⽣まれます。そうなることでアイデアを発⾔しやすい雰囲気が⽣まれ、より時代に即した企業へと成⻑できるでしょう。
業務を効率化できる
デジタル技術を扱うスキルの習得により、業務効率化の実現も可能です。例えば、請求書や納品書の発⾏をパソコンや専⽤ツールを使い業務の⼿間と時間を⼤幅に削減できます。
また、デジタルツールを活⽤すると、社名や電話番号の写し間違いのようなミスを減らせる点もメリットです。業務のやり直しが減るだけでなく、取引先からの信頼獲得にもつながります。
企業の⽂化や社⾵を守れる
リスキリングとは既存の社員が新しくスキルを習得したり、保有するスキルをアップグレードし対応できる業務を増やすことです。つまり企業の⽂化や社⾵が⾝についた⼈材が新しい業務に当たることになり、たとえ業務内容が変わっても企業⽂化や社⾵に影響しません。
企業⽂化や社⾵を守るということは、企業らしさを守ることを意味します。企業らしさを次世代に引き継ぐためにも、リスキリングは有意義な⼈材育成⽅法です。
⼈材採⽤や育成のコストを抑えられる
⼈材が不⾜する業務があるときは、その業務に精通した⼈材を採⽤することで対応できます。しかし、⼈材を採⽤するには多⼤な時間やコストがかかり、企業側の負担になることも事実です。さらに新卒を採⽤するのであれば、採⽤コストだけでなく育成コストもかかります。
しかし、既存の⼈材をリスキリングし、⼈⼿が⾜りない業務に対応できるようにすれば、スキル習得までに時間はかかるものの、⼈材採⽤のコストを抑えられます。また、リスキリング通常業務と並行して実施するため、⽣産性の低下を抑えられる点もメリットです。
リスキリングのデメリット
メリットの多いリスキリングですが、デメリットになり得る点や注意すべき点もいくつかあります。なかでも次の事項はデメリットになる可能性が⾼ので、スキリングを実施する前に対策を検討しておくことが必要です。
- スキル取得により転職リスクが⾼くなる
- 継続的に取り組むには時間と⼿間がかかる
それぞれのポイントを説明します。
スキル取得により転職リスクが⾼くなる
リスキリングにより現在必要とされるスキルを獲得すれば、社員個⼈の能⼒と対応⼒が⾼まります。企業にとっても財産となりますが、対応⼒が⾼まった社員が外部に流出することもあるでしょう。
実際にリスキリングでは主にデジタル化に対応する技術を取得することが多いため、リスキリングした社員は他の企業でも重宝される傾向があります。給与などの待遇⾯や福利厚⽣などがより好条件の企業があれば、転職を検討する社員も増えるかもしれません。
転職リスクを軽減するためにも職場環境を見直してみましょう。社員の満⾜度や不満に思うことなどを定期的に調査し改善に努め、定着率を⾼める必要があります。
継続的に取り組むには時間と⼿間がかかる
リスキリングを実施するためには、対象となるスキルや社員の選定、研修⼿段の検討などが必要になります。⼿間がかかるだけでなく、研修をアウトソーシングする場合はある程度まとまった費⽤も必要です。
リスキリングを実施する際の3 つのポイント
リスキリングを実施すると、社員の転職やコストの増加などのリスクが想定されます。しかし、魅⼒的な職場環境を構築し常に費⽤対効果を計算しながら実施することで、ある程度のリスクを回避することは可能です。次のポイントをおさえリスキリングを実施していきましょう。
- 社内の体制を整える
- 継続的に実施する
- アウトソーシングを活⽤する
それぞれのポイントについて解説します。
1.社内の体制を整える
リスキリングを実施する際には、社内から反発を受ける可能性があります。
社員からは「スキルを学ぶ時間がない」「負担が⼤きい」という声が、経営陣からは「即戦⼒のある⼈材を雇⽤するほうが簡単なのではないか」という声が上がる可能性もあるでしょう。実施前にリスキリングのメリットとデメリットを社員・経営陣に伝え、リスキリングの必要性を客観的に説明した後、賛同者を確保して体制を整えておくことが必要です。
2.継続的に実施する
リスキリングは短期間で効果が見込めるものとは限りません。社員の能⼒に合わせて、必要な回数の研修を実施したり、継続的に学べる仕組みを構築したりすることが求められます。
リスキリング⾃体が業務の⼀部として定着すると、社員の抵抗感を軽減できます。学びやすい仕組みを構築し、なおかつ継続的に実施するようにしましょう。
また、⼀度の研修やコンテンツ学習ではスキルが⾝に付かないケースも少なくないので、単発で終わるのではなく、継続的に取り組める仕組みづくりが重要です。特に、負担なくリスキリングを継続できるような仕組み作りはもちろんのこと、それに適したツールの導⼊も検討してみるといいでしょう。
3.アウトソーシングを活⽤する
リスキリングの仕組みを内製することも可能です。しかし、必要なスキルの洗い出し、リスキリングのためのコンテンツ化、コンテンツの有効性の検証・改善などを実施しなくてはいけないため、通常の業務に⽀障が出る恐れがあります。時間をかけてコンテンツを作成したとしても、すでに時流に合わなくなっている可能性も想定されるでしょう。また、トレーナーとして適切な⼈材が社内にいるとも限りません。
効率的にリスキリングを実施するなら、アウトソーシングの利⽤がおすすめです。リスキリングに対応しているアウトソーシングサービスは数多くあります。費⽤だけでなくコンテンツの内容も吟味し、複数のサービスを⽐較してから⾃社が必要とするスキルを獲得できるものを選びましょう。
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