近年、営業活動のデジタル化の動きが活発になり効率化が進んでいます。しかし「営業の属人化」はデジタル化ではなかなか解消できず、未だ課題として抱えている企業が多く存在しているのが現状です。
「営業の属人化」はなぜ起こるのか。問題が生じる要因ともたらされる問題点、解消方法を解説します。
もくじ
営業の属人化とは
営業の属人化とは、 営業の成績や売上が営業マン個人の能力や手法に依存してしまう状態のことです。
属人化してしまうと、営業活動のノウハウを社内に蓄積できなくなります。活動の方法が営業担当者各々のやり方に左右されるため、営業活動の分析や課題の抽出などができず、改善策の立案・実行が困難になります。
さらにノウハウの共有ができないと、新人教育にも影響が出ます。また営業手法を受け継ぐことが困難になると、担当者が異動・退職した場合に既存の顧客の引き継ぎができないなど、問題が発生しやすくなるでしょう。
個人に依存した営業は、企業にとって好ましいものとはいえません。担当が変わったとしても、安定した営業成績を上げられる環境の構築が求められます。つまり営業の属人化は、企業にとっては組織的営業の妨げとなるものであり、解消すべき課題なのです。
営業の属人化が起こる主な2つの理由
営業の属人化は多くの企業で見られる現象です。意図せずいつのまにか属人化に陥っているケースは少なくありません。ここでは営業の属人化が発生してしまう理由を解説します。原因は組織によってさまざまありますが、一般的な理由は以下の2つです。
- 組織的な情報管理ができていない
- 属人化を防止する仕組みや対策がない
それぞれ詳しく解説していきます。
1.組織的な情報管理ができていない
営業活動が属人的になってしまう理由として、一般的にまず挙げられるのは組織的な情報管理ができていないことでしょう。営業活動は外出が多く、業務内容も自社商品やサービスの売り込み、顧客課題の解決、リサーチ、顧客管理など、多岐に渡ります。
個人の営業活動とタスク処理に追われて、チーム内で情報を共有する余裕がなくなってしまうことも考えられます。担当者からの報告がなされない、チームとの連携がうまく取れていないなどの原因 によって、「誰が」「どこで」「誰と」「何を」「どのように営業活動を行ったか」を組織として把握できなくなることも考えられます。そうなることで組織的な管理ができず 、個人 に委ねることになり 、結果的に営業の属人化が進行する悪循環が生まれてしまいます。
2.属人化を防止する仕組みや対策がない
組織内に営業の属人化を防止する仕組みや対策がないケースは少なくありません。
もともと営業職は相対評価をされることが多く、社内での競争が激しくなりやすい特徴があります。営業活動を標準化する仕組みがなければ、ノウハウの共有をするよりも、個人としての営業力向上のみを目指すほうが有利という考え方をする営業マンも出てくるでしょう。
チーム全体で営業の属人化防止の意識を共有して、仕組みや対策をすることが求められます。
属人的営業で起きやすい問題
営業の属人化への効果的な対策を立てるためには、属人化によって起きやすい問題を把握しておくことが重要です。主な問題点は以下の4つです。
● ノウハウがチームに残らず営業力を伸ばす機会を損失してしまう
● 帰属意識の低下に伴い個人プレーが増える
● 引き継ぎの際にトラブルが起きやすくなる
● 指導者の能力によって教育内容にばらつきが生じる
これらの問題について詳しく解説していきます。
ノウハウがチームに残らず営業力を伸ばす機会を損失してしまう
営業の属人化によって、個人が営業活動を通じて得たノウハウがチーム内で共有されない場合には、経験やテクニックが効果的に活用されません。トップセールスのノウハウが蓄積されることが理想ですが、属人化していることで個人で完結するケースが増えるでしょう。
営業活動においての成功体験はもとより、失敗談も重要です。しかし、そういった情報が共有されないとチームとしての経験値の蓄積につながりません。営業チーム全体としての営業力の向上に結びつかず、成果を上げる機会を損失する可能性が大きくなります。
帰属意識の低下に伴い個人プレーが増える
営業の属人化が帰属意識の低下につながる可能性があります。帰属意識が低下すると、個人プレーの増加が予想されるでしょう。
営業の属人化が帰属意識の低下をもたらすのは、ノウハウを共有する環境がないから、つまりチーム内でのコミュニケーションが不足しているからです。コミュニケーションが少ないと、信頼関係が深まりません。その結果、個人プレーが増え、営業マンによって対応がバラバラになってしまい、質の低い営業活動が展開される可能性が高まるでしょう。また営業チームとしての組織力も発揮できなくなります。
引き継ぎの際にトラブルが起きやすくなる
新旧の営業担当者間での顧客情報の引き継ぎがスムーズでないと、営業担当者が交代する際に、顧客との間でのトラブルが発生しやすくなります。これまでのやりとりや状況の把握が十分でないと、顧客側から不信感をもたれる場合もあるでしょう。
また、前述の個人プレーが増えることとも関連しますが、営業担当者によって対応が異なることにより、トラブルやクレームが発生するケースも出てきます。
営業の属人化の弊害は、引き継ぎの際に顕在化することが多いため、あらかじめ対策を講じる必要があります。
指導者の能力によって教育内容にばらつきが生じる
営業活動が属人化するのは、マニュアルや仕組みがないためです。その状態でチームのメンバーを育成した場合、指導する側の能力や経験に依存することになり、教育内容にばらつきが生じてしまう可能性が大きくなるでしょう。
営業担当者の教育では商品の知識、ヒアリング能力、課題解決能力、コミュニケーション能力など、身に付けるべき要素が多岐にわたって存在しています。マニュアル化されていないと、育成の時間がかかり内容にもばらつきが出るでしょう。
指導方法にばらつきがあると、新人が単独で業務を進めても問題ないレベルまでの到達時間に差が生まれます 。育成中の新人が戦力になるまでは、既存のメンバーで営業活動を行わなければならないため、営業の機会損失につながる可能性が大きくなるでしょう。
営業の属人化はリモートセールスによってさらに深刻に?
リモートセールスが浸透することによって、営業チーム内でのコミュニケーションが減り、その結果として営業の属人化が起こってしまうケースが増えています。リモートセールスは時間や場所に左右されない営業手法であり、移動にかかる費用や時間も軽減され、営業の効率化という点でもメリットが多いといえるでしょう。
しかしその反面、営業活動が個人で完結してしまい、ノウハウやナレッジの共有の機会が減少する ことによって営業の属人化が進行し、新人の育成がスムーズに進まない弊害も出てきてしまいます。
リモートセールスによる属人化を防ぐためには、弊害を理解してコミュニケーション不足を補う対策の必要性を認識することが重要です。業務フローを明確にし、デジタルツールを使って営業活動を可視化することが有効といえるでしょう。
営業の属人化を解消するための方法
営業の属人化を防止するためには、営業チームが一丸となって対策を立てて、実行に移すことが必要です。営業チーム全員が解消方法を共有しなければなりません。ポイントになるのは、属人化を防ぐ対策を維持しつづける仕組みをいかに構築するかでしょう。
大きく分けると、営業の属人化を防ぐ方法は以下の3つです。
● 営業プロセスの標準化
● 情報共有の仕組み化
● 情報を正しく活用できるように管理
それぞれくわしく解説します。
営業プロセスの標準化
営業の属人化を防ぐためには、営業プロセスの標準化が必要です。標準化は属人化の反対語とも位置づけられる言葉といえるでしょう。属人化が「特定の人物 がいないと業務が滞ってしまう状態」であるのに対し、標準化は「誰が業務についても品質や必要な時間を一定に保てる状態」を指しています。
また、一般的に標準化とはルールやマニュアルを定めることですが、定めるまでの流れと定めたあとの継続する仕組みができてようやく営業プロセスの標準化が実現できます。
ここでは営業プロセスの標準化の流れを3つに分けて解説していきます。
1.現時点での営業活動を確認する
営業プロセスを標準化するためには、まず営業活動の現状を把握することが必要です。現状がわからなければ、実状に沿った マニュアルを作ることか難しくなります。
現状把握でのポイントは、可能な限り営業活動の内容を具体化して、なおかつ細かく分解し、数値として確認できる状態にすることです。例えばテレアポによる営業の場合、ターゲットとなる企業、営業トークの内容、アポイント獲得率、電話などによる連絡を取った数、ヒアリング内容など、細かく項目を設定してチェックしていきます。
さらに顧客フォローの方法、提案資料の内容、商談の内容、商談遷移率、成約率、NGの理由など、すべての営業マンから聞き取りをして、現状を確認する必要があるでしょう。
2.営業活動の改善とルールを設定する
営業活動を確認して現状把握をしたのちに、全員が取り入れるべきところと改善すべき点をピックアップして改善し、さらに改善の効果が見込まれるルールを設定します。いいところの具体例としては、顧客の要望に対するトップ営業マンの対応の迅速さなどがあげられるでしょう。改善すべき点の具体例は、商談を成立させたい気持ちが強すぎて、強引に進めてしまうことなどが考えられます。
ルールは営業活動だけでなく、営業のノウハウ、ナレッジ、テクニックなどもルールとして明文化するといいでしょう。
また、ルールとともに営業活動のマニュアルも作成します。まずは、継続して成果を出している 営業マンのノウハウを元にマニュアルを作成することをお勧めします。マニュアルがあることによって、他の営業担当者がトップセールスの営業手法を真似できるだけではなく、育成をする側の偏りを是正できます。また新人教育の効率化を図ることが期待できるでしょう。
3.ルール・マニュアルの普及と改善を繰り返す
営業活動のルールとマニュアルを策定したのちに、営業チーム全員で共有して実践していきます。そして ルールとマニュアルに沿った営業活動を行った結果、効果が出ているかどうかを確認することも重要です。
トップ営業マンの行っている活動を手本としてルールやマニュアルを作成し、他の担当者がそれに従って活動したとしても、成績をあげられるとは限りません。話し方や仕草、担当者の性格やキャラクターなどによって違いが出てくるからです。
もし望ましい結果が出なければ、その原因を分析し改善策を練って実行する、というPDCAを回していきましょう。ルールやマニュアルの普及も必要ですが、このPDCAを回していくことこそが営業の属人化を防ぎ、組織的な営業で効果を上げていくために求められることです。
情報共有の仕組み化
営業プロセスの標準化とともに重要なのが、情報共有の仕組み化です。ルールとマニュアルを整備したとしても、営業活動に関する情報を「いつでも」「どこでも」そして「誰でも」共有し活用できるようにしなければ、営業の属人化を解消することはできません。
情報共有の仕組みを作るためには、まず共有すべき情報の項目 をおおよそ決めておく必要があります。例えば顧客情報の場合、主に5つに分けられます。
● 会社情報
● 個人情報
● 問い合わせ情報
● 商談情報
● 契約情報
ここから、それぞれさらに細かく項目を設定するといいでしょう。顧客情報をフォーマット化してわかりやすくまとめることによって、担当者の変更時や不在時などに、対応の迅速化を図れます。顧客とのやりとりの進捗状況も簡単に把握できます。
ただし、これらの顧客情報を人の手のみで入力するとなると、膨大な時間と手間がかかってしまうため、ツールを効果的に活用して管理することをおすすめします。
CRM(Customer Relationship Managementの略で、日本語では「顧客関係管理」と訳される。)やSFA(Sales Force Automationの略で、日本語では「営業支援システム」と訳される)を活用することで、顧客情報の入力や管理を効率的に管理できるようになり、営業の属人化を防ぐことにつながるでしょう。
コストをかけずに管理や効率化を図る場合は、エクセルやスプレッドシートをおすすめします。エクセルはマイクロソフトを導入している企業であれば、追加費用なしで利用可能、スプレッドシートはGooglesuiteを導入している企業であれば、追加費用なしで利用可能です。
ツールを使って顧客情報の管理を行う場合に得られる効果は、かなり大きいと考えられます。顧客のLTV(Life Time Valueの略で、日本語では「顧客生涯価値」と訳される)の向上、新規顧客への営業活動の円滑化、既存顧客のアップセルやクロスセルなど新たな売上の創出などです。
営業活動に関するノウハウやナレッジを共有して活用することによって、チーム全体の営業力を底上げできるでしょう。ノウハウやナレッジの中にはルールやマニュアルに落とし込めない部分も出てきます。
業界ごとに個別の課題もあるでしょう。また、営業活動を行っていく中で悩みが出てくるケースも考えられます。
月に1回、勉強会やミーティングを開催することで、営業情報の共有だけでなく、課題解消方法が見つかることも期待できるでしょう。コミュニケーションツールを効果的に活用するのもおすすめです。
また、顧客情報だけでなく、営業情報に関しても、CRMやSFAを活用することで、効率的に簡単に共有できるでしょう。
情報を正しく活用できるように管理
顧客情報や営業情報を共有できる環境を整えたら、それで終わりではありません。それらの情報が最新で正確なもの、そして使いやすい状態であるように管理する必要があります。
CRMやSFAを活用する場合には、必要事項が漏れなく正しく記載されていることが前提です。項目の設定が正しいか、内容に間違いがないかの確認と同時に営業チームの全員がツールを使える状況を整備することも必要です。
マニュアルやルールがあっても、営業担当者によって活動のやり方が異なる部分も出てくるでしょう。活動を通して、適切なナレッジやノウハウが変化することもあります。それぞれの担当者に合った形で、扱うデータをカスタマイズしたほうがいい場合もあるでしょう。
CRMやSFAを活用するとともに、エクセルやスプレッドシートでの管理を並行して利用するやり方もあります。情報を使いやすい形で管理することも重要です。
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営業の属人化とは、営業活動が営業マン個人の手法や能力に依存してしまっている状態を指します。これは企業にとって、好ましい状態とはいえません。営業が属人化すると、営業のノウハウを社内で蓄積できなくなる、帰属意識が低下してしまう、引き継ぎの際にトラブルが発生してしまうなど、様々な弊害をもたらす可能性が大きくなるからです。
営業の属人化を解消するためには、営業のプロセスを標準化し、情報共有を仕組み化し、情報を適切に管理することが求められるでしょう。CRMやSFAなどのツールの活用がおすすめです。『shouin for リモートセールス』には、営業プロセスの標準化・情報共有の仕組み化を実現できます。
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