2020.11.10 営業Tips

オンライン営業で成果を出すために意識したい5つのコツ

オンライン営業は、その名の通り、訪問ではなくテレビ電話やWeb会議システム等を利用した「オンライン」での営業方法です。デジタルトランスフォーメーション(IT技術を生かし生活を豊かにすること)がさまざまな分野で注目されている昨今では、コロナ禍をきっかけとした時代のニーズもあり、訪問しない形の営業手法も一般的になってきています。ここではオンライン営業のメリットや、失敗例を踏まえた成功のコツについて解説します。

オンライン営業と従来の営業の違い

まずは、オンライン営業と従来の営業(訪問型営業)の違いについて整理します。
前提として、オンライン営業でも訪問型の営業でも、その目的は変わりません。どちらの手段でも「顧客の課題解決をするための提案をし、自社の製品やサービスを導入してもらうこと」がゴールとなります。では、ゴールに至るまでの商談の流れがどのように異なり、それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるのか比べてみましょう。

従来の営業(訪問型営業)の流れ

訪問型営業の場合、「何はともあれ、まずはアポ(訪問)」という風潮がありました。
もちろん商材や企業の方針によって差はありますが、今ほどオンラインでの打ち合わせが一般的でなかった頃は、「まずはご挨拶だけでも」「具体的な導入の予定はないが、関連する情報に少し興味がある」「なるべく早く導入したいため、至急見積りが欲しい」…など顧客の検討状況も問わず、とにかく営業が訪問して打ち合わせをすることが商談の第一歩でした。
初回の訪問で顧客情報・課題・検討状況のヒアリングや、サービスの紹介を行い、次回訪問で提案・概算金額の提示、さらに条件のすり合わせや検討を進めてもらうための追加提案、見積りの提出…といった形でクロージング(契約)に至るまで何度も顧客の元へ訪問します。
また、すぐに商談にならなくても、「近況のお伺い」「情報交換」「新サービスの紹介」などを口実に、定期的に訪問することで関係性を作っていくということも一般的でした。

従来の営業(訪問型営業)のメリット

対面でのコミュニケーションにより、顧客の温度感を掴みやすい

言葉以外の情報をもとに相手の心情を読み取るコミュニケーションのことを「ノンバーバル・コミュニケーション」といいます。相手の視線や表情を含めた「雰囲気」や「温度感」に応じて適切な対応を図ることで、信頼感や安心感を与えられるため、商談においてもとても有効です。対面で直接顧客の「雰囲気」や「温度感」を感じられることが、訪問型営業の最も大きなメリットと言えるでしょう。

訪問先の現場を見られるため、状況把握しやすい

訪問先は情報の宝庫です。顧客の施設・設備の状況や社内の雰囲気など、商談に活用できる情報を得ることができます。これらの情報が、自然なアイスブレイクのきっかけになることも多く、商談に有利な状況を作ることができます。

時間をかけて訪問してくれたということで、心情的に受け入れられやすい

訪問されるということは、すでに「自分のためにコストをかけてくれている」ということにつながります。もちろん全てにおいて優遇されるということではありませんが、「訪問している」という事実がクライアントの心を開く要素になるなど、顧客との良好なコミュニケーションや新たな商談につながりやすい側面があります。

従来の営業(訪問型営業)のデメリット

移動時間や交通費などのコストがかかる

訪問営業は、多くの移動時間や交通費といったコストをかけることが前提の営業方法です。この訪問コストを上回る結果を得るために、さらに多くの準備コストが必要になることも考えられます。また出張が必要な遠方の案件などは、コストが見合わなそうな場合は訪問ができなかったり、訪問するにしても数ヶ月先になってしまったり、簡単に訪問できる近郊に比べてどうしてもフォローが手薄になってしまうという課題があります。

1件の提案に時間がかかるため、多くの件数をこなせない

訪問営業では多くの時間や体力が必要とされます。移動時間などの制約のため、1日に訪問できる件数は3件から4件ほどが限度になりますし、訪問を終えた後オフィスに戻ってからその日の商談の記録をつけたり、翌日の訪問の準備をしたりと、残業が増えてしまう傾向がありました。また件数を多くこなせないため、ホットな問い合わせが入ってきても営業の予定が埋まっており、初回アプローチ(訪問)が数週間後になってしまうというようなことも起こり得ます。

オンライン営業の流れ

コロナ禍における外出自粛・非対面推奨の影響で、多くの企業が訪問する代わりにWeb会議での打ち合わせへと切り替えました。大規模な展示会や、訪問営業が難しくなったため、企業の情報収集や購買プロセスもより一層オンラインへとシフトしています。
企業はオンラインで情報収集を行い、Webから問い合わせ、メールや電話でやりとりを行い、必要があればオンラインで打ち合わせを実施。見積りはメールで送付し、提案もWeb商談で実施する…という形で、今までの営業プロセスがほぼ全てオンラインで完結できるようになりました。
「訪問」する必要がなくなったため、初回アプローチまでのリードタイムが短縮され、その後のフォローも効率的になりスピーディーな対応が可能になったのです。

オンライン営業のメリット

移動で発生するコストを削減できる

オンライン営業での最も大きいメリットは移動にかかるコストの削減です。交通費はもちろんのこと、営業担当の時間の削減も大きなメリットです。1件の商談に合計1時間の移動、1日2件の商談を行うとすれば1か月間(20日間)で40時間のコストに相当します。これは、2019年施行の働き方改革法案で時間外労働の上限とされる45時間にほぼ匹敵する時間となり、削減できれば企業にとっても大変大きなメリットになると言えるでしょう。

商談数の増加やリードタイムの短縮を見込める

削減できた移動時間は、新たな商談に充てることが可能となります。月間40時間は月平均労働時間の1/4にも相当するため、25%の営業効率アップにつながると言い換えることもできます。訪問する必要がなくなることで、移動時間を気にせず1日に多くの商談予定を入れることができますし、訪問の場合アポイントが1週〜数週間後となっていたところを、オンラインであれば数日以内に実施できるなど、非常にスピーディーな対応ができるようになります。

拠点が離れているクライアントにも提案できる

自社サービスを必要とする顧客は、全国に存在します。今まで出張できず、電話やメールのみで対応していた顧客とも、オンラインであれば訪問と同じように打ち合わせが可能です。顔と顔を合わせて挨拶をしたり、資料や提案書を一緒に見ながら説明したりできるので、従来に比べてグッと手厚いフォローが可能となります。移動コストが必要のないオンライン営業は、顧客との距離を問題としないため、ビジネスチャンスを大幅に広げることができるのです。

オンライン営業のデメリット

対面に比べ情報量が少なく、相手の反応を直接見られない

PC画面越しの商談は、対面と比べると相手の反応がよく見られないためどうしても淡々と進めがちになってしまいます。特に複数人でのWeb商談では、他の作業をしながら参加する「ながら参加」も起こりがちなため、どんなに一生懸命説明しても相手は全然聞いていなかったということがあり得ます。

双方がツールを使いこなせていないと、商談が中断してしまうことがある

顧客側がオンライン商談そのものに慣れていない、初めてのツールを使う場合は開始までに時間がかかってしまったり、接続した後もPCや通信環境によっては商談が中断してしまう場合もでてきます。また、企業によってはセキュリティのポリシーなどにより、特定のWeb会議ツールを利用できない場合もあります。

顧客との関係性構築が難しくなる

オンラインでの商談の場合、目的がはっきりとした打ち合わせ以外は断られやすく、従来の「ご挨拶」「情報交換」といった関係性構築のためのアポイントが取りにくいという課題があります。そのため、何度も訪問し実際に会って、雑談なども含めしっかりコミュニケーションを取ることで、関係性を深耕するような営業はオンラインでは非常に難しくなります。

このように、オンライン営業には大きなメリットもありますが訪問営業とはまた違うデメリットがあるため、その点に十分留意して取り組むことが重要です。

オンライン営業で気を付けたい3つの失敗パターン

オンライン営業では対面時と同じ感覚で営業をしてしまうと、商談がうまくいかなかったり、思うように成果につながらない場合があります。ここではオンライン営業でよくある失敗例をご紹介します。

一方的なコミュニケーションで顧客に伝わらない

アイスブレイク無しでいきなり本題に入ってしまう

オンラインでは名刺交換もなく顧客から直接得られる情報が少ないため、アイスブレイクのトークもせず、接続後すぐ本題に入るケースがほとんどではないでしょうか。オンラインでは会話も機械的になりやすく、必要な情報を伝えるだけで終わりがちなため、顧客との関係性構築が非常に困難です。少しでも打ち解けた商談にするため、事前にアイスブレイクとして使えそうな顧客情報や時事ニュースなどを調べておき、顧客が答えやすい質問を用意するなど準備しておくことが必要です。

一方的な案内となり、顧客に伝わっていない

オンライン上で資料などを共有しながら説明していると、説明を聞いている顧客側も相槌を打ったり、途中で質問を挟むことが難しいため、一方的な説明となりがちです。意識してこまめに顧客の反応を引き出すようにしないと、相手の温度感が分からず、その後の商談にもつながりづらくなってしまいます。

約6割が「ながら」参加をしている可能性

特に複数人での商談では、参加しながら話を聞かず別の作業をしている「ながら参加」にも注意が必要です。Web会議を行ったことのある会社員を対象にした意識調査(※1)によると、Web会議中に関係のない業務などを『いつもしている』または『時々したことがある』と回答した人の割合は29.5%となっています。『全くしたことはない』人は41.5%で、残りの約6割の顧客は何か別の作業に気を取られている可能性があると言えます。

※1 急増するweb会議で気疲れする人は5割 リモートワーク1か月調査
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000038247.html

機器や音声のトラブルで商談が進まない

接続ができず、商談の開始に時間がかかってしまう

顧客の環境やセキュリティのポリシーなどによって、ツールに接続できない場合があります。誰でも安全かつ簡単に利用できるツールを使用することや、事前にどのツールなら使えるのか確認をすることが必要です。事前に確認していても、当日いざ開始しようと思ったらつながらない…ということもあり得るため、代替案も用意しておくべきでしょう。

音声が相手に聞こえておらず、大事な部分が伝わらない

PCや通信回線の状況によっては、視聴状態が悪くなり音声が聞き取りづらくなったり、商談が中断してしまう状況も考えられます。接続状況が悪くなった場合の対応や、よくあるトラブルシューティングを心得ておく必要があるでしょう。

リスケされてしまう

対面でのアポだと会議室を押さえる手間や、自社まで足を運んでもらうため断りにくいという心理が働きます。しかし、オンラインでは自席での開催のため約束をうっかり忘れてしまったり、対面に比べれば断りやすいためにスケジュールが流動的になってしまうことがあります。

上記のようなトラブルを避けるため、オンラインならではのコミュニケーションを心がけ、ツールの事前確認やスケジュールのリマインドなど、しっかりとした準備を徹底しましょう。

オンライン営業で成功に導く5つのコツ

それでは、前述の失敗パターンも踏まえ、オンライン営業で成功させるためのコツを5つご紹介します。

(1)ツール・環境の準備

オンライン営業では、まずは安定して商談を実施できるツールと、PCや通信回線などのインターネット環境が重要になります。
顧客には事前にWeb商談はできる環境か、ツールの指定があるかを確認しておくことが必要です。また、顧客が商談する場所によっては接続が不安定なことがあり、商談中に固まってしまうなどのトラブルになる可能性があります。音声は安定した電話回線を使用し、映像のみPCのブラウザベースで商談が行えるタイプのオンライン商談ツールを利用することも視野に入れましょう。

オンライン商談ツールの選び方については以下の記事を参考にしてみてください。

(2)見え方・聞こえ方に気を付ける

オンライン営業では、映像や音声も重要な要素になります。
例えば映像では、ノートPCの付属カメラを使用する場合、上からカメラを見下ろす状態になることが多く、顧客側からすると見下された印象を受ける場合があるので注意が必要です。また、暗い場所を選んでしまうと営業行為全体の印象が暗くなってしまいます。背景も含めて明るい場所で商談することを心がけましょう。アプリケーションによっては背景に画像を設定することも可能です。事前にテストして、アイスブレイクや商談につながるものを用意するのもコツと言えます。
音声に関しては、マイクを別途用意するのがおすすめです。指向性の高いマイクは雑音を拾いにくく、商談に集中することができます。また、オンライン商談での会話では、対面と比較するとどうしても音声が聞き取りにくくなりがちです。話すトーンは多少あげて、リズムをつくるなど聞き取りやすい会話を心掛けましょう。実際にツールを利用しての事前練習をおすすめします。

(3)情報・画面共有の仕方

情報共有では、すべての資料を画面に表示するのではなく、一部は資料にアクセスできるURLでも情報を共有しておくと、事後の確認も簡単にできるため、顧客にとってより親切です。

また画面共有の際には、デスクトップ上のフォルダや資料、ブラウザで開いているタブなど、顧客に見せたくないものが誤って見えてしまう危険性もあるので、十分注意しましょう。

資料については、印刷して読むことを前提した資料とは別物と考えましょう。細かい文字はPCの画面では読みにくいため、顧客が理解しやすいようスライドの情報を整理し、1つのスライドには1つの重要なメッセージが伝わるような工夫が必要になります。

オンライン営業に適した資料の作成方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

(4)アイスブレイクを意識的に行う

オンラインでの打ち合わせは、雑談が減り、必要な情報のやり取りのみになりがちです。そのため合理的で効率化できるとも言えるのですが、従来の訪問営業ではできていたような、人と人との信頼感を醸成するようなコミュニケーションが難しく、関係性作りが困難です。機械的なサービス説明だけで終わってしまうと、営業担当が一人の人間として顧客の印象に残らず、その後の提案などにも繋げにくくなってしまいます。そこで初回の打ち合わせ時には名刺交換の代わりに必ず自己紹介をするなど、アイスブレイクをしっかりと行うことで、「営業担当者」として顧客に認識してもらえるようなコミュニケーションを心がけましょう。

オンライン商談におけるアイスブレイクについては以下の記事を参考にしてみてください。

(5)顧客の意見を引き出す会話を心がける

オンライン営業では、対面の会話より話し出すタイミングが掴みづらいこともあり、営業側の一方的な説明状態に陥りがちです。また、「温度感」が伝わりにくいオンライン営業では、相手が緊張しているのかリラックスしているのか、興味を持っているのか無関心なのかなど、対面の時以上に相手の反応に気を配ることが重要です。一方的に話し続けるのではなく、顧客からの反応をうまく引き出すような進行を心がけましょう。

例えば説明の節目ごとに「ここまでで何かわからないことはありますか」と質問を促したり、そもそも「説明」というよりはヒアリングをベースとした会話にするなど、相手の質問や意見を引き出すことが重要です。顧客のちょっとした感想から、新たなビジネスチャンスにつながることもよくあるケースと言えます。
そして今説明している内容には関心が薄いと感じたら、早々に切り上げ別の項目の説明に移るなど、常に顧客の状況を確認して対応するようにしましょう。商談は説明の場ではなく、コミュニケーションをとる場であることを忘れずに、注意深く相手の状況を見ながら進行することが何より重要です。

ヒアリングについて苦手意識がある、ヒアリングのコツが知りたいという方は以下の記事を参考にしてみてください。

このように、オンライン営業は対面と違って環境に関する準備が必要だったり、顧客から得られる情報量が少なかったりと、信頼関係を構築するのが簡単とは言えません。
しかし、環境確認やリマインドの徹底などの事前準備、顧客の状況を意識して相手にあった情報提供により、顧客からの信頼を得ることも十分可能です。これらのコツを押さえて、しっかり準備することを心がけましょう。

まとめ

オンライン営業は従来の訪問型の営業方法に比べて効率的で、場所の制限なく商談獲得・受注に繋げられる可能性を秘めています。今回紹介した5つのコツを意識して、営業成果・効率アップに繋げていってください。