営業でヒアリングをする際、顧客から聞いたことをメモしそびれてしまったり、必要な情報を聞き忘れてしまったりといった経験は、ほぼ全ての営業担当者にあるといっても過言ではないでしょう。
会話がメインとなる営業活動においては、ヒアリングをしつつ商談時のハンドリングもしなければならないため、頭の中はマルチタスクの状態になり、失敗が起こりやすいと考えられます。
ですが、ヒアリングシートを上手く活用すれば、聞き漏れや話題の脱線を防ぎながら知りたい顧客情報を整理することができます。
この記事では、ヒアリングシート作成のコツと心得を、実際に使える項目例を交えて解説します。
もくじ
ヒアリングシートとは
ヒアリングシートは、顧客への質問事項をまとめたシートのことです。
顧客情報は営業がヒアリングによって聞き出した情報をベースに取りまとめられますが、営業活動だけでなく、その後のマーケティング活動にも重要な役割を果たします。
そのため、ヒアリングシートの設問自体に抜け漏れがないか、念入りに確認した上で活用していくことが求められます。
ヒアリングシートの基本
ヒアリングシートでは、自社のサービス提案にあたり知っておく必要がある項目を漏れなく設置していきます。
一度完成し業務へ導入したヒアリングシートは、部署内でバラつきなく顧客情報を収集・管理できるよう、基本的には同じものを一定期間は使用し続けることを推奨します。
そのため、初回作成段階で設置項目はしっかり固めておきましょう。
活用するメリット
ヒアリングシートを活用すると、聞き漏れを防げること、顧客理解を深められることの2つのメリットが期待できます。
聞き漏れを防げる
営業において顧客情報は、目標達成のためのライフラインと言っても良いくらい重要なものです。せっかくヒアリングしても、得られた情報に抜け漏れがあっては適切な提案ができません。
例えば、先方に予算があることが確認できていたとしても、導入時期が把握できていなければ、直近の売上見込みに入れて良い顧客なのか、そうでないのかが分かりません。
必要な情報を漏れなく把握することがその先の営業活動や提案の質に関わるので、ヒアリングシートを活用し聞き漏れを防ぎましょう。
顧客理解を深められる
ヒアリングシートに沿って抜け漏れなくヒアリングができれば、その顧客を理解する上での要点は掴めているはずです。
得る情報が偏らず、最低限必要なことを押さえられているので、よりフラットで深い顧客理解が可能になります。
設置項目の例
ヒアリングシートを具体的にどのように作れば良いか迷った際には、以下の項目例を参考に設計してみましょう。
基本情報
- ・企業名
- ・企業サイトURL
- ・業種
- ・電話番号
- ・メールアドレス
- ・所在地
- ・担当者名
以上のように、アタック先顧客の基本的な情報を記載する箇所を設けましょう。
担当者については、窓口と責任者が変わる場合にはそれぞれ分かるようにメモを取り、所属部署もできれば記載しましょう。
顧客理解に関する項目
- ・事業内容
- ・主要商材・サービス
- ・競合企業・サービス
- ・売上高
顧客理解に関しては、企業のIR情報などを見てみると業績に関する情報が掲載されています。時間が限られていることも多いとは思いますが、できる限り事前に情報を得ておきましょう。
現状に関する項目
- ・抱えている課題
- ・現在検討している解決策
- ・導入中のサービスとその満足度
今、どのような課題を抱いているか、その課題に対する解決策としてはどのようなものを検討しているのか、実際に利用中のサービスはあるかヒアリングします。
導入中の場合には、満足度とその理由を聞いてみることで、顧客が抱える課題感を知ることが出来ます。
過去に関する項目
- ・これまでに類似サービスを導入した経験があるか、あるいはしているか
- ・導入していた場合、利用した感想
- ・導入した/しなかった理由
提案したい商材に似たものを今までに利用したことがあるのか、またその理由を聞いてみましょう。類似サービスを既に利用した経験がある場合には、提案のヒントを得られるかもしれません。
未来に関する項目
- ・今後どうなっていきたいか
- ・企業・部署・個人単位の目標値
目標に関しては、短期・中期・長期で時間を区切り、将来的にどうしたいのか、そのためには直近どのような目標を達成する必要があるのかヒアリングします。
目標の内容については、提案中のサービスが叶えられることにより切り口が変わります。営業活動をサポートするサービスであればアポイント数や案件数の目標となるでしょうし、マーケティングをサポートするサービスであればリード獲得数やWebサイトへの訪問者数になるなど、サービスに関わる目標数値を項目にしましょう。
予算に関する項目
- ・商品購入/サービス導入の予算
- ・予算は確保しているか/していない場合、どのようにする予定か
提案内容に大きく影響するので、予算については必ず項目を設置しましょう。ただし、顧客側が能動的にサービスの導入を検討しているのでなければ、予算は取っていないことが多いでしょう。もし予算がないのであれば、追加の予算は確保できそうなのか、それとも来季以降での検討となりそうなのか、予算はいつ頃申請するのか、といったところまで探りを入れられると良いでしょう。
決裁に関する項目
- ・商品購入/サービス導入の決裁権を持つのは誰か
- ・決裁フローはどのような流れか
- ・導入への判断軸はどこにあるか
こちらも必須項目で、決裁フローや誰が最終決裁権を持っているのかを確認します。
この点が分かっていないと、想定よりも決裁までに時間が掛かり受注時期が後ろ倒しになってしまったり、決裁者の判断軸がわからず見当違いな提案をしてしまうなど、せっかくのチャンスを逃しかねません。欠かさず確認しましょう。
顧客のニーズに関する項目
- ・提案中の商材を導入する必要性があるか
- ・なぜ必要か
顧客が、提案中の商材に対して必要性をどのくらい感じているのか、理由も併せて確認します。具体的にどのような点が顧客のニーズを叶えられそうなのかを把握することがポイントです。
導入時期に関する項目
- ・いつ頃に導入/利用開始したいか
- ・導入の決定時期はいつ頃になりそうか
利用開始の希望時期と意思決定の時期を把握することで、その後の提案や導入までの段取りがしやすくなるだけでなく、売上見込みの目途がわかるため営業計画を立てやすくなります。
以上を参考に、自社の商材にあったヒアリングシートの項目を考えてみましょう。
ヒアリングシート作成のコツ
質の高いヒアリングシートを作るためのコツには、必須項目を決める、フレームワークを活用する、商材ごとにヒアリングシートを作成することの3つが挙げられます。
必須項目を決める
ヒアリングシートの設問の中でも、「これだけは最低限抑えていたいこと」を必須項目として設置します。
この時に注意したいのは、必須項目をできる限り精査し最小限にすることです。必須項目が多すぎると埋めることが目的になってしまい、双方向の会話ではなく一問一答で質問攻めするようなヒアリングになり本末転倒になってしまいます。
何を必須とすればいいのか判断に迷う場合は、BANT(予算、決裁権、必要性、導入時期)を押さえられるように設問を考えると良いでしょう。
フレームワークを活用する
前述で触れたBANTのようなフレームワークを活用すれば、自社が知りたい情報を目的に沿って整理することができます。
フレームワークには、他にも「3C分析」やこのあと紹介する「SPIN話法」などさまざまな種類がありますので、目的に合わせて参考にしてみると良いでしょう。
商材ごとにヒアリング項目を設定する
商材を複数扱う場合は、それぞれで抑えておくべきポイントが異なる場合もあります。
例えば、商材によって料金体系が変わるのであれば、料金発生に関わることは見積もりの関係上押さえる必要があります。課金がアカウント/企業単位ではなくユーザー/個人単位であれば、実際に利用したい人数を把握することが必要です。
ヒアリングシート活用のポイント
ヒアリングシート活用時には、事前準備とヒアリング中それぞれで気を付けておきたいことがあります。それぞれ見てみましょう。
予め段取りを考えておく
どのような流れでヒアリングや提案を進めていくのか、イメージトレーニングしておきましょう。事前に段取りを考えておけば、その場で「次はどのような展開にしよう」などと悩まずに済み、ヒアリングに集中できます。
不安な場合にはトークスクリプトを作っておき、その内容を頭に入れて進行すると安心です。オンライン商談などであれば、いざという時のカンペとして置いておいても良いでしょう。
トークスクリプトの作り方は以下の記事で詳しく解説しています。
自然な会話を心がける
顧客の検討段階や営業のフェーズによって必要な情報は変わってくるため、無理やり一度に揃えようとせず、あくまで自然な会話を心がけましょう。
項目を埋める、問診のようなヒアリングは事務的な印象を与えてしまい、顧客の心を開きにくい可能性があります。とくに顧客の温度感が高くない段階で、商材に対するニーズや、予算、決裁の流れなどを単刀直入に聞いてしまうと心証を損ねてしまったり、警戒されてしまう可能性が高いため、聞き方を工夫する必要があるでしょう。
SPIN話法を使うと自然な流れで質問できるので、自然な会話に自信のない方は以下記事を参考にしてみてください。
まとめ
ヒアリングシートの活用は、営業活動を効率的かつ効果的に行うにあたり大きな要素となるでしょう。上記のポイントを押さえてヒアリングシートを作成し、実際に出来上がったら、ヒアリングの現場で活用してみて改善を重ねていきましょう。
ヒアリング時のテクニックやコツが知りたい方は、以下の記事でヒアリングのコツについて紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。